modulator(変調器)とdemodulator(復調器)を合わせた造語。モデム装置の送信側はディジタルデータを変調し、アナログ信号に変換し送出する。受信側は、アナログ信号を復調しディジタルデータに変換する。
解説記事 モデムとは
http://wimax-page.123-info.net/archives/330
備考1 帯域幅
「変調」と「復調」は、特にモデムにおいては複雑だが、こんなことをしなければならない理由は帯域幅にある。電話線の帯域幅はイーサネットなどと比較すると極端に狭い。
たとえば、50Mbpsのディジタルデータをそのまま送信するには、最低でも50MHzの帯域幅が必要である。実際には矩形波(現実は台形波)を流すには数倍の帯域幅がないと信号は鈍る。どれほどの帯域幅が必要なのかは、信号の立ち上がり時間(rise time tR)で決まる。
直感的に分かりやすい具体的な例で示すと、オシロスコープがある。プローブはその本体の性能を活かすには帯域幅を忘れてはならないが、たとえば、立ち上がり時間 3.5ns(f=0.35 /tR=100MHz)の信号を観測するとき、3%以下の精度で見るには最低でも 0.87ns (f=0.35 /tR=400MHz)のプローブ(本体も含めて)が要る。(Sony Tektronix社の資料より)
オシロスコープは正確さが求められるもので、通信回線はこれに比べるとそれほど正確である必要はないが、広帯域が必要なことには変わりはない。いずれにしても、基本周波数の数倍の帯域幅が必要なことがわかる。
備考2 符号化
ギガビットイーサネットなどは、必要な帯域幅を大きく減らす特別な工夫が施してある。基本周波数は 80MHzで1Gbpsを達成するが、その仕組は符号化にある。80MHzはあくまで基本周波数であり、帯域幅を意味しない。つまりその数倍の帯域幅がないと矩形波(現実は台形波)は大きく鈍る。
解説記事 伝送符号 [C3] 4D-PAM5
http://wimax-page.123-info.net/archives/2514
備考3 モデム・チップ
「モデム」の使われる範囲は、従来とは異なってきたため、以下を追記。(2015-0831)
モデムは、従来は既存の電話回線につないで画像(手書きの資料など)を伝送する装置や、プロバイダと接続するための DSL (Digital Subscriber Line)モデムが主だったが、近年はこれらとは完全に異なるモデムチップが現れた。
たとえば、4Gベースバンド・モデム・チップは、LTE回線で使用する無線モデムの半導体チップである。「モデム」の用語を使う理由は、変調器と復調器の両方の機能を有するため。
モデム・チップが現れた背景にはソフトウェア無線 (Software-defined-radio) 技術の発達がある。ディジタル信号処理が高速化(時間の短縮)したことにより混合器 (mixer)、フィルタ(filter)、変調器(modulator)、復調器(demodulator)など、従来は高周波のアナログ信号処理で行っていた領域をディジタル処理でも遜色なく行えるようになったためである。
モデム (modem)は modulator と demodulator を組み合わせた造語で、変調器と復調器の両方の機能を有する装置であることは、今でも変わりない。