WiMAX 2, WiMAX, WiFi, 無線LAN, ADSL, Super-WiFi, イーサネットなど, 通信ネットワーク技術全般の詳細を解説します。モバイルWiMAX, WiFi等の比較も参考にどうぞ。

制限無しのプロバイダ

オンラインゲームでは十分な通信速度と、その安定度が必要です。

「通信速度」は正確に言うと「通信路容量」なのですが、
「何それ?」と思う人も多いでしょう。

技術的な詳細を知りたい人は「伝送路容量(通信路容量、速度)」を参考にどうぞ。

では、オンラインゲームは、なぜ十分な「通信速度」が必要なのか?

答えは、動画のデータ量が極端に多い傾向があるからです。静止画像は、文字情報よりデータ量が多くなりがちですが、まして動画はなおさらです。

回線の「安定度」については、通信速度が安定しなければ、片手落ちです。(普通の言い方をすると)遅くなったり早くなったりして安定していなければ、使いにくいのです。

大手のプロバイダは特定のサイトやサービスについての制限があることが多いです。

「転送量の制限」とは、1ヶ月あたり何ギガバイトというように制限することです。超えるとどうなるかというと、良くあるのは、伝送レートを極端に小さく(遅く)制限する方法があります。

これがレンタルサーバーの例では、今閲覧していただいているサイトがそうですが転送量の制限を超えると、サイトをまったく閲覧できなくなります。(このサーバーは追加料金を払うと転送量の制限を増やすことができます。)

しかし、個人が運営する普通のサイトは、転送量の制限を超えることはまず考えられません。

転送量には、このような厳しい制限がある例もあります。

ちょっパヤ!ネットは、一定期間の転送量の制限などがありません。

オンラインゲームでも快適なプレイができます。

サーバーを運用する場合は、IPアドレスは固定である必要があります。IPアドレスが変わると、(変わったことの通知がない限り)サーバーとつなぐことができません。

普通のプロバイダが提供する一般のインターネット接続サービスは、IPアドレスは固定ではなく、回線につなぐ度に変わります。

ちょっパヤ!ネットは固定IPのサービスも利用できます。

伝送路と終端 3. 波形の振幅を計算する

伝送路を伝わる信号の振幅を計算する

伝送路(伝送線路 transmission line)を伝わる信号の振幅は、次に示す式で計算できます。(*1)損失のない理想的な無損失伝送路 (Lossless transmission line)の動作は5番目の式を使わずに簡単に計算できます。

損失のある有損失伝送路 (Lossy transmission line)は少し複雑ですが、係数さえ求めておけば後は同様に計算できます。

ダイオード終端は、非線形素子 (non linear element)が関わるため簡単には計算できません。

3番目の式は使わなくても計算できます。
実際の伝送路は損失がありますから、5番目の式は必要です。5番目の伝播係数は、伝送路の抵抗、表皮効果(skin effect)、直列インダクタンス、並列キャパシタンスの効果によるものです。

次の条件を設定しました。回路図は図2.1.3a と同じです。

ZS=0 信号源インピーダンス
ZO=50 伝送路の特性インピーダンス
ZL=100 負荷インピーダンス
VIN=5V 信号振幅

1 入射係数 Input acceptance coefficient
  A(\omega)=\frac{Zo}{Zs+Zo}=\frac{50}{0+50}=1

2 近端反射係数 Source-end reflection coefficient
  Ref_1(\omega)=\frac{Z_S - Z_O}{Z_S + Z_O}=\frac{0 - 50}{0 + 50}=-1

3 透過係数 Output transmission coefficient
  T(\omega)=\frac{2 \times Z_L}{Z_L + Z_O}=\frac{2 \times 100}{100 + 50}=1.33

4 遠端反射係数 Far-end reflection coefficient
  Ref_2(\omega)=\frac{Z_L - Z_O}{Z_L + Z_O}=\frac{100 - 50}{100 + 50}=0.333

5 伝播係数 Propagation coefficient
  H_X(\omega)=exp({\sqrt{-X(R{\omega}+j{\omega}L) (j{\omega}C)}})

ここで、
  R=Ω/inch 伝送路の直列抵抗
  L=H/inch 伝送路の直列インダクタンス
  C=F/inch 伝送路の並列キャパシタンス  
  ω=2πf  角周波数、
  X =inch ケーブル長
  
  1回転は2πラジアンより 
  ω=dθ/dt = 2π/T=2πf
    θ 角度 ラジアン radian
    T 周期 秒 second
    f 周波数 frequency

それぞれの式は周波数の関数です。信号源抵抗、伝送路の特性インピーダンス、負荷抵抗の値は周波数と共に変化するからです。(変化しないのが理想ですが現実には不可能です。)

Sample circuit of receiving end termination
Sample circuit of receiving end termination
ZS=0,
ZO=50,
ZL=100,
VIN=5V

3.1.1 送信した信号が伝わるまでの経過

信号源から出た信号は、次のように伝わります。

1. ドライバの信号は、伝送路の入り口では入射係数で決まる振幅になる。
  信号は伝送路を伝わり遅延時間を経過した後にレシーバへ届く。
  遅延時間は媒体の比誘電率 dielectric constant (relative permittivity)と長さにより変化する。
2. 受信端まで届いた信号は、遠端反射係数=0以外のときはここで反射する。
3. 反射により送信端まで戻った信号は、近端反射係数=0以外のときはここで反射して再び戻る。
  戻るまでの遅延時間は送信のときと等しい。

受信端で観測する信号は、以上の経過を経て現れます。

では、この流れを具体的に計算します。

負荷まで伝わる1回目の信号

信号源が送信を開始すると、ノード1の電圧は上昇します。この回路の条件では(1)式の係数=1より 5Vになるのは明らかです。

ノード2の電圧は、信号源インピーダンスが0であることから信号源の電圧がそのまま伝わり、ここで伝送路に入ります。無損失伝送路では信号は減衰しませんから、5Vのままの電圧がノード3まで到達します。

しかし、ノード3で観測する波形は、進行波の振幅5Vではなく、ノード3の反射波を合成したものです。ノード3はZOとは等しくない終端条件であることから、反射波が生じます。(仮に、ZL=ZOの条件では反射係数=0になる)
ノード3に現れる電圧は進行波と反射波それぞれの振幅を加算します。

ノード3に1番目に到達した波形の振幅は、信号源の振幅5Vを超えますが、この現象はオーバーシュート(over shoot)です。1番目のオーバーシュートを計算します。

反射波の振幅は
  5V \times Ref_2=5 \times 0.333=1.66V  (3.1)

進行波の振幅は 5Vであるのがわかりますから、1番目のオーバーシュートは
  1.66V + 5V=6.66V  (3.2)

または、T(ω)で計算します。(1回目はこの式で簡単に計算できますが、2回目以降は簡単に計算できません。)1番目のオーバーシュートは、
  5V \times T(\omega)=5 \times 1.33=6.66V  (3.2b)

1回めのオーバーシュートの振幅は6.66Vの大きさであることが、シミュレータの結果(図2.1.3b)からもわかります。信号源から負荷まで伝わる所要時間は、シミュレータで設定した 500nsです。(反射波が戻るのに要する時間も等しい。)

受信端から反射する1回目の信号

1回めの反射波の振幅はすでに求めたとおりです。負荷抵抗は伝送路のインピーダンスと等しくないことから、信号源の方向に反射して戻ります。

なぜ反射するのか疑問に思う人がいるかもしれませんが、エネルギー保存の法則を考えればわかると思います。エネルギー(この例では正確には電力)はいきなり消滅しません。消滅しないものは送信端に戻るしかないのです。消えないものは反射して戻らないとつじつまが合わない理屈です。
送信端で1回目に反射して進む信号

負荷から反射して戻った信号は、信号源抵抗が0であることからZOと等しくないためここで反射し、再び負荷の方向へ進みます。反射係数Ref1=1より、100%の振幅を反射します。すなわち反射波の振幅は
  1.66V \times Ref_1 =1.66V \times -1=-1.66V  (3.3)

再び負荷まで到達した信号は、また反射します。そのときの反射波の振幅は
  -1.66V \times Ref_2 =-1.66V \times 0.333=-0.552V  (3.4)

この時点でノード3で見える2番目の波形(アンダーシュート under shoot)の振幅は、ノード3に現れた今までのものをすべて合成した値です。つまり
  5V + 1.66V -1.66V -0.552V=4.448V  (3.5)

信号が何度も反射する様子は、オーバーシュートまたはアンダーシュートがなくなるまで続きます。

受信端に現れる信号

以上のように、それぞれの部分は計算式で求めることができます。

受信端で観測する波形は、進行波と反射波の合成を累積したものです。

信号波形は以上の動作を繰り返したものから求めることができます。ここで計算した値と回路シミュレータが描いた波形は正確に一致することがわかります。

なお、立ち上がり時間=0で設定したほうが波形はわかりやすいかもしれません。

立ち上がり時間 0の信号をグラフで表すと90°になります。こんな信号は現実には存在しません。なぜなら無限大の周波数成分を含むからです。

蛇足ながら、「波形」は便宜的な表現です。振幅対時間で表すと波形ができるのであり、2次元の形が実際にある訳ではなく、信号そのものは電気的な強弱にすぎません。

同じ信号でも「波形」を観測するときの視点をどこから見るかにより信号の形は変化します。時間軸(time domain)を視点にするだけではなく、周波数軸(frequency domain)で観測する方法もあります。

3.2 伝送路を伝わる信号を図で求める

信号の振幅は計算式で求めることもできますが、もっと簡単に求める方法があります。反射を繰り返す様子を図にしたものがラティス・ダイアグラム (Lattice diagram)です。

この図では、信号波形の振幅をもっと簡単に計算できます。右側の値は受信端に現れる振幅で、累積した値を示すことがわかります。

Fig. Lattice diagram of the sample circuit
Fig. Lattice diagram of the sample circuit

参考資料
*1
High Speed Digital Design A Handbook of Black Magic
H. W. Jhonson, M. Graham Prentice-hall 1993

伝送路と終端 2. 回路シミュレーション

回路シミュレーションを自在に使えるようになると便利です。注意しなくてはならないこともいくつかありますが、伝送路の反射波やリンギングなどの振幅がどうなるのかを事前に予測することができます。

回路シミュレータで知り得ないことは、たとえば耐電圧です。どれくらいの電気的なストレスがかかるのかは教えてくれません。どれほどの電圧がかかるのか回路を事前に検討しておくことや最終的には実際の回路で実験することも重要です。

2.1 受端終端の回路シミュレーション

解析した回路について説明します。回路シミュレータは、Linear Technology社のLTspiceを使用しました。

2.1.1 理想的な終端条件
図2.1.1a 理想的な終端条件 ー 受端終端
Fig. Circuit: Ideal condition - Parallel termination
Fig. Circuit: Ideal condition - Parallel termination
Load(負荷)=50Ω

左側が信号源で、右側が負荷です。特に断りがない場合は、左から右へ信号が伝わるように普通は描きます。(シミュレータではない図面の大きな回路図では、現実にはそうもいかないことがあり工夫します。)回路図を読める人なら、意味はだいたいわかると思います。

伝送路の特性インピーダンス
ZOは特性インピーダンス(characteristic impedance)です。このタイプは無損失型の伝送路 (lossless transmission line)です。TDは Time Delayで 500ns(500×10-9秒)です。TDが決まると物理的な長さも決まります。

LTspiceは有損失型(lossy transmission line)も扱うことができます。

伝送路は、50Ωや75Ωのものが良く使われます。日本国内で入手できる同軸ケーブルはこのタイプが多いです。

終端抵抗と特性インピーダンスの値が等しい条件ならば、一部の事情を無視すれば何Ωでも構いません。具体的には許容電力です。インピーダンスは低いほど同じ振幅(電圧)でも電力が増えるので、現実にはいくらでも良いという訳にはいかないのです。もう一つは、回路の浮遊容量 (stray capacitance)の大きさです。インピーダンスが高いと浮遊容量の影響が強く働きます。この点でも低いほうが有利です。

回路のその他の部分
信号源 V1は電圧源 (Voltage Source)で、Rser=0は内部抵抗=0Ωを意味します。
文字列の説明
“Vin”と”Vout”は記入したコメントで、信号は左の信号源から伝送路を伝わり右の負荷まで流れます。

上下の2つの文字列は、回路シミュレータへの命令(Spice directive)です。
1番目  ”.tran 0 30u”の意味は、過渡現象解析(transient analysis)を表し、0秒から30usまでの動作特性を調べます。

2番目  ”PULSE(0 5 5u 300n 300n 10u 30u)”は、V1をパルス出力にする設定です。VINITAIL(初期値)=0V、VON(波高値)=5V、TDELAY(遅延)=5us、TRISE(立ち上がり)=300ns、TFALL(立ち下がり)=300ns、TON(波高時間)=10us、TPERIOD(周期)=30us

現実の装置と回路シミュレータ
現実と回路シミュレータの違いの一つがここにあります。回路シミュレータでは、直流電源とパルス発生器の区別がありません。電源のシンボルをクリックしてメニューからパルス出力を選ぶだけです。
理論上は直流を時間で区切ると、いとも簡単にパルス出力にできますが、現実にはそう簡単に作れるものではないのです。

立ち上がり時間がそこそこなら割りと簡単に作れますが、高速(立ち上がり時間が短い)のものほど難しく、まして、ごく普通の直流電源装置からパルス波形を出力することはまったくできません。実現するにはこれとは完全に異なる回路構成が必要です。

では、シミュレーション結果です。

図2.1.1b 理想的な終端特性 ー 受端終端
Fig. Graph: Ideal termination condition
Fig. Graph: Ideal termination condition
Load(負荷)=50Ω

緑のトレースが伝送路の入力「V(n001)」で、赤のトレースが伝送路の出力「V(n002)」です。n001とn002は回路のノード(節点、node)番号です。

伝送路の出力(赤)は入力(緑)よりも遅れて現れます。それ以外は、入力と完全に同一波形です。現実の伝送路では必ず遅延時間があります。終端は完全に理想の状態ですから波形はまったく乱れません。

2.1.2 理想的な終端とほど遠い条件

特性インピーダンス50Ωから大きくはずれる条件を試します。終端抵抗は1KΩです。

図2.1.2a RL >> Zo ー 受端終端
Fig. Circuit: Under damped termination
Fig. Circuit: Under damped termination
Load(負荷)=1KΩ
図2.1.2b RL >> Zo ー 受端終端
Fig. Graph: Under damped termination
Fig. Graph: Under damped termination
Load(負荷)=1KΩ

伝送路出力の赤い線は大きく波打っていますが、これをリンギング (ringing) と言います。リンギングが大きい原因は、終端抵抗が合わないために生じる反射 (reflection)によるものです。

伝送路は等しいインピーダンスで終端しなければ負荷端で反射する現象が発生します。リンギングは時間の経過と共に収束します。なぜそうなるのかは、この後(次の記事)に出てくる計算例でわかると思います。

入力信号と比べるとわかるように、出力は似ても似つかない形です。これでは信号は正しく伝わりません。

なぜ抵抗値ではなくインピーダンスか?
抵抗(resistance)は周波数を伴わない直流の条件での値に対し、インピーダンスは周波数を伴う概念です。直流からその回路が扱う範囲の周波数で考える必要があります。

たとえば、50Ωの巻線抵抗器 (wire wound resistor)は直流では50Ωでも、高い周波数ではインダクタンス成分により大きく異なる値を示します。高速・高周波信号を扱う終端抵抗にはまったく使用することができません。巻線抵抗が悪いのではなく、使い方を知らない使用者の問題です。

2.1.3 理想的な終端から少しはずれた条件ー1

今度は、負荷条件が1KΩから100Ωに変わりますが、まだ、Zo=50Ωとは等しくありません。(このような条件をUnderdampedと言います。)

図2.1.3a RL > ZO ー 受端終端
Fig. Circuit: Under damped termination
Fig. Circuit: Under damped termination
Load(負荷)=100Ω
図2.1.3b RL > ZO ー 受端終端
Fig. Graph: Under damped termination
Fig. Graph: Under damped termination
Load(負荷)=100Ω

前の条件よりもリンギングはかなり小さく、すぐに収束します。進行波と反射波の合成により起こりますが、リンギングの一つ目が大きく2つ目以降がすぐに小さくなるのは、反射率が小さいからです。

2.1.4 理想的な終端から少しはずれた条件ー2

今度は、負荷抵抗=20Ωで、Zoよりかなり小さい条件です。

図2.1.4a RL < ZO ー 受端終端
Fig. Circuit: Over damped termination
Fig. Circuit: Over damped termination
Load(負荷)=20Ω

リンギングはまったく現れません。出力は入力信号の振幅に徐々に近づきます。(このような条件をOverdamped と言います。)原因は、やはり進行波と反射波の合成によるものです。

図2.1.4b RL < ZO ー 受端終端
Fig. Graph: Over damped termination
Fig. Graph: Over damped termination
Load(負荷)=20Ω

2.2 送端終端の回路シミュレーション

2.2.1 送端終端 高ZINの負荷条件

次の回路の条件は、負荷抵抗が高い値のときです。

図2.2.1a RL = 1MΩ ー 送端終端
Fig. Circuit: Ideal condition - Series termination
Fig. Circuit: Ideal condition - Series termination
Load(負荷)=1MΩ

負荷抵抗は “1M” ではなく “1Meg” を指定します。LTspice では1Mは 1 mili (10-3)を表すからです。受信側の条件は、MOS(Metal Oxide Semiconducotor)ロジック回路のような高入力インピーダンスを想定したものです。(MOS回路の入力インピーダンスは1MΩどころではなく、これより少なくとも4〜5桁は高い値です。)

図2.2.1b RL = 1MΩ ー 送端終端
Fig. Graph: Ideal condition - Series termination
Fig. Graph: Ideal condition - Series termination
Load(負荷)=1MΩ

ノード2では信号の反射があることがお分かりでしょうか。これが、送端終端の大きな特徴です。

2.2.2 送端終端 中ZINの負荷条件

次に、負荷インピーダンスを1MΩより低い1KΩに下げた条件ではどうなるのかを試します。

図2.2.2a RL = 1KΩ ー 送端終端
Fig. Circuit: Load Z<sub>L</sub>=1KΩ - Series termination
Fig. Circuit: Load Z<sub>L</sub>=1KΩ - Series termination
Load(負荷)=1KΩ
図2.2.2b RL = 1KΩ ー 送端終端
Fig. Graph: Load Z<sub>L</sub>=1KΩ - Series termination
Fig. Graph: Load Z<sub>L</sub>=1KΩ - Series termination
Load(負荷)=1KΩ

負荷インピーダンスを1MΩより低い1KΩに下げた条件では、受信側の波形の振幅は、1MΩではほぼ100%に対し信号源の約95%です。

これは、計算すればわかることですが、ノード2(終端抵抗の後=伝送路の入り口)では振幅は50%になり、透過係数=1.905を掛け算した値になるためです。(計算方法は次の記事で。)

伝送路と終端 1. 終端の方法

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<更新情報>
2019.01.10
・「1.3 送端終端」で、配線長の説明に誤りがあり訂正。
2018.07.12
・送端終端の配線長の制限について説明を追加
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はじめに

ここでは、伝送路(伝送線路、Transmission line)の終端と信号波形との関係について説明します。

その話の前にまず、基本的ですが重要なことを整理しておきます。

伝送路を一言で簡単に表現すると、時間の要素が関係する回路です。信号が伝わるまで時間がかかるという意味ですが、時間の要素を考えなくてはいけません。伝送路は具体的には、無線通信機器などの高周波を扱う回路や高速の信号(立ち上がり時間の短い)を扱う回路では必須です。

電気信号がA点からB点まで伝わるときほとんど一瞬に伝わるように思えますが、このわずかな時間を無視できない回路です。信号波形を考えるとき、避けては通れません。

集中定数回路(Lumped Constant Circuit)はこれと対比し、信号が伝わるまでの時間を気にする必要がありません。正しく表現すると、時間の要素を無視できる回路のことです。周波数の低い、たとえばオーディオ(可聴帯域)周波数の回路は、一般にこれに該当します。このような回路では、電気信号の伝わる時間は無視して考えることができます。

もう使われなくなったと書いて問題ないはずですが、電話の伝送線はたかだか3KHzまでの低周波回路にも関わらず、長距離では終端した伝送路が必要です。配線長が長大で低周波でも波長との関係を無視できないからです。言い換えると、波長との関係を無視できない回路はすべて伝送路で扱うことが必要です。

3KHzの電気信号の波長は、波長短縮率を無視すると100キロメートルです。波長の数倍の距離を伝送するときは、伝送路により伝えなければ信号は乱れます。昔の長距離電話のラインはこれより長いところがあり伝送路は必須でした。(信号は減衰するので、途中に増幅器を入れて中継することもある。)

現在は、電話の幹線はすべて光ファイバーのディジタル回線で、残るのはユーザー宅と電話局の間のみです。

伝送路を終端(termination)する方法は種類があります。いくつかの方法について、回路シミュレータの動作結果と共に、なぜそのように動作するのかを説明します。

回路シミュレータは便利な道具には違いないのですが、回路がなぜそのように動くのか理屈がわかっていないと思うように使いこなすことはできません。どんな理屈で動くのか、理解するための手助けになれば幸いです。

信号が伝播(でんぱする理論については簡単ではありませんが、ここでは触れません。しかし、信号がどのように振る舞うかを調べるのは大して難しくありません。電気の性質はとても難解でも、実際に使うのは難しくないことと似ています。

信号と波長

伝送路の仕組み[1]ー 距離と形状」にも書いたように、伝送路の物理的な長さと波長の関係で、ある一定の長さを超える条件では、信号の波長を無視して扱うことができません。

これが何を意味するのか?

何も考えずに単純に線でつなぐだけでは信号を正しく伝えることができないのです。

具体的には、伝送路の長さが伝播遅延時間 (propagation delay time)の2.5倍(*1)を超えるあたりから、伝送路の特性を無視した接続方法では信号に悪い影響が顕著に現れ始め、長くなるほど伝えたい信号はまったく伝わらなくなります。

伝送路の長さが影響を及ぼす伝播時間との比率については、文献によりさまざまです。これよりはるかに厳しい条件のものもあります。どれが正しくどれが正しくないという問題ではないのです。

問題の本質は、何倍以内なら無視できるかということではなく、信号に対してどの程度の影響が現れるのかです。何倍以内なら無視できると単純に言えません。条件により変化するからです。必要なら波形にどの程度の影響があるのか計算で求める方法もあります。すべての信号はアナログであると主張する理由です。
   
ディジタル処理はアナログ信号を、さも1と0であるかのようにみなしているに過ぎません。ノイズがしきい値を超えるか超えないかで、1と0は反転します。たとえばA/D変換器の上位ビットなら、変換後の信号には原信号には無い大きなノイズが発生します。ディジタルテレビ放送に変わってから、ごくまれに見苦しい画面が出ることがありますが、似たような原因による顕著な例です。

伝送路の遅延時間が信号の立ち上がり時間の2.5倍程度より長い条件では、回路は適切な終端をしないと、信号は正しく伝わりません。

前置きはこれくらいにして終端の具体的な方法について説明します。

1 終端の方法

1.1 受端終端 Receiving end Termination

受信端で終端する方法です。別名は、並列終端 (Parallel termination)です。伝送路と負荷が並列になることからこのように呼びます。

技術的には、この方法は受信端の反射を 0にする(理想的な場合)ものです。(*2)

受端終端はごく普通で、「終端」という場合は、この方法を指すことが多いでしょう。1本の抵抗器でグランド(0ボルト=回路の基準電位)へ終端するものが標準的です。

図1.1 受端終端
Fig. Receiving end Termination
Fig. Receiving end Termination
反射を最小限にするにはRTはZOと等しい値を選びます。

特徴は、レシーバが(受信端で分圧しない場合は)ドライバの信号振幅を最大限に利用できる点です。後に出てくる送端終端との大きな違いは、終端抵抗が直流電力を消費することです。

方式とは無関係に、回路図には普通は現れないことですが、受信側には容量成分 (capacitance)がありますから、交流成分(信号が遷移する瞬間に流れる)の電力を消費します。

1.2 テブナン終端 Split Termination

「テブナンの定理」で有名なフランスの技術者の名前から来たものです(「テブナン終端」の名称は日本以外で通じるかどうかは知りません。)が、2本の合成抵抗で終端することにより1本の場合より少ない電流で駆動できる特徴があります。駆動能力の十分でないロジックICなどでは有効な方法です。

ロジックHIのときはドライバからRT2へ電流が流れ、ロジックLOのときはV+からRT1の方向へ流れてドライバが電流を吸い込みます。RT1とRT2の合成抵抗はZOと等しく、抵抗1本のときより電流が少ないことは直感的にお分かりでしょう。

ただし、この方式はロジック信号のときのみ使用できる方法であり、アナログ信号の終端には使えません。

図1.2 テブナン終端
Fig. Split Termination
Fig. Split Termination
受信端(並列)終端より少ない電流ですむ方法です。
一般にはあまり聞いたことが無いかもしれませんが、半導体テスタ(ハンディタイプのテスタ=マルチメータのことではなく、大がかりで複雑な装置です。)に使用するピンドライバ(pin driver)の中身はアナログ回路です。一般のICはロジックHIとLOの仕様(例 出力ピンでは出力電流と電圧)を規定しますが、ピンドライバは特性が仕様を満足するかどうか試験する信号を与える回路で、ロジックHIとLOの信号レベルを正確にプログラムできます。これを実現するには、ロジックICの構成で作ることはまず無理で、HIとLOの値を正確に出力(または入力)する機能をアナログ回路で構成して実現します。

信号を受ける側はアナログ・コンパレータです。用途により超高速(短い時間)で応答するものを使います。現在の市販のICには300ps程度で応答するものがあります。(精密でなおかつ早いほど安定して性能を出すことは等比級数的に難しくなります。)

このような回路では、テブナン終端のような方式は使用できませんが、ディジタルだのアナログだのという議論は無意味なのです。この領域ではディジタルもアナログもなく物理的な信号そのものです・

1.3 送端終端 Sending end Termination

終端抵抗を伝送路と直列に入れる方法で、別名は直列終端(series termination)やsource terminationです。

技術的には、この方法は送信端の反射を0にする(理想的な場合)ものです。(*2)

特徴は、直流電流が流れないことです。この方式はかなり変わった別の特徴があり、受信端の信号の反射により目的の波形を保ちます。シミュレーションの波形を見るとわかります。

送端終端は受信端の信号の反射により目的の波形を保つことから、配線長の制限があります。

配線長Lは信号が伝わる遅延時間が定まりますが、信号のサイクル時間(周期)よりも短くできない点です。

例をあげると、信号の基本周波数が100MHzのとき、サイクル時間(周期)は10nsですから、配線長による伝播遅延時間 (propagation delay time) は10nsよりも短くなければなりません。

つまり、信号の周期はこれより短くなくてはならないことから、逆に配線長はこれよりも短い条件では波形が乱れ保てなくなります。波長短縮率を60%を仮定すると、次の計算から配線長 Lは1.8メートル以内であることより長いことです。(訂正済み)

L \ge 300,000,000(m) \times 10ns \times 0.6
L \ge 1.8(m)

送端終端は、やはり駆動能力の十分でないICなどでは有効な方法です。

注意しなければならないのは、伝送路の途中の信号は反射波が見えますが、この事を知らずに伝送路の途中から信号を取り出したり、オシロスコープでこの波形(次の記事です)を見て慌てないことです。

直列終端について解説した資料などがたくさんあるようですが、この重要で基本的なことに触れないものが多く見られます。並列終端とは何がどう違うのかはじめは分からないと思います。

また、当然のことですが、受信端にZOと等しい抵抗をつけると、それはもはや直列終端ではない、単に抵抗で分割した並列終端回路に変わります。

図1.3 送端終端
Fig. Series Termination
Fig. Series Termination
直流電流が流れず、反射波により波形を整形します。
1.4 RC終端 RC Termination

特徴は、終端素子に直流電流が流れないことです。やはり駆動能力の十分でないICなどでは有効な方法です。

図1.4 RC終端
Fig. RC Termination
Fig. RC Termination

定常状態(直流)ではキャパシタには電流は流れませんが、信号レベルが遷移するときには導通します。時定数(=RT x CT)はクロックレートより十分に大きな値を選びます。デューティ比 (duty cycle)が50%に近い条件を維持できる場合は、直流的に平衡な状態にすることができこの回路はうまく働きます。

この条件では、終端抵抗の消費電力をテブナン終端よりも少ない値にすることができる特徴があります。(*2)

1.5 ダイオード終端 Diode Termination

実際にはショットキーダイオード (schottkey barrier diode)を使います。スイッチング特性の十分なものでないとこの用途には使えません。

ダイオードの働きは信号振幅を次の範囲内に抑えることです。

信号がロジックHIのときは、最大でV+とダイオードの順方向電圧 (VF: forward voltage)を足し算した値です。(ショットキーダイオードは0.3V程度)信号がロジックLOのときは、0VからダイオードのVFを引き算した値、約-0.3Vの範囲です。

ダイオードは2本しか端子がなく単純で簡単そうに見えますが、大間違いです。使いこなすのはなかなか手ごわい素子で、不適切な使用例が見られます。情報もあまり十分ではないように思います。この使用例ではない別の用途ですが、メーカーの情報でも中には誤解を招くような表現が見られます。

図1.5 ダイオード終端
Fig. Diode Termination
Fig. Diode Termination
最大でV+[VF]V〜-[VF]Vの範囲内に電圧を抑えます。
1.6 アクティブ終端 Active Termination

アクティブ終端 (active termination)は、抵抗器などの受動部品 (passive device)ではなく、能動部品 (active device)を使用する方法です。終端抵抗にFET (Field Effect Transistor) を使う方法や、複数の終端抵抗をトランジスタ・スイッチで切り替えるものがあります。

FETのドレイン電極(drain)とソース電極(source)の間をチャンネル(channel)と言いますが、この2つの電極の間はゲート(gate)電極の電圧により抵抗値を可変できる性質があります。この特性はBJT: バイポーラ・トランジスタ(Bipolar Junction Transistor) ではまねすることができません。BJTは、電流をオン・オフする用途には最適です。BJTで複数の終端抵抗を切り替えるものや、FETの性質を利用した終端抵抗の値を可変にするものがあります。

参考資料
*1
原著 Circuits, Interconnections, and Packaging for VLSI by H. B. Bakoglu IBM Thomas J. Watson Research Center 1990 Addison-Wesley
翻訳版 VLSIシステム設計 回路と実装の基礎 丸善(株)

*2
High Speed Digital Design A Handbook of Black Magic
H. W. Jhonson, M. Graham Prentice-hall 1993

帯域幅と伝送レート

はじめに

帯域幅と伝送レート(伝送速度)にはどんな関係があるのか、興味があると思います。

帯域幅が狭いと伝送レートは低いのはなぜか?
逆に、帯域幅が広いと伝送レートは高いのはなぜか?

帯域幅と伝送レートは密接な関係があるのですが、ここでは、このことについて解説します。

ディジタル信号は、”0″と”1″のように表すことができます。”0″は信号がない状態を表し、”1″は信号がある状態です。電気信号でこれを表現すると、一つは低い値で、もう一つは高い値で置き換えます。

ディジタルとは
ディジタル(digital)は、単語ディジット(digit 数字、指など)の形容詞で、指で数えることができるという意味です。アナログ (analog, analogue) と対比します。
正論理と負論理
信号”0″を低い電圧で表し、信号”1″を高い電圧で表す方法は正論理(せいろんり positive logic)です。

これとは逆に、信号”0″を高い電圧で表し、信号”1″を低い電圧で表す負論理(ふろんり negative logic)も良く使います。

正論理は明快で分かりやすいですが、常にこれが最良であるとは限りません。信号を負論理で表す利点は、実際にロジック回路を設計する人ならすぐに分かることですが、論理ゲート (logic gate)の種類を減らす効果があることです。ここではこれ以上は触れません。

信号を多値で表す形式
ある程度以上の距離における信号の伝送では、3値以上の電圧で表現する方法もあります。信号を伝送するとき、一般に多値の形式は効率良くデータを伝送できます。多値の形式が一概に効率が高いとは言えませんが、それぞれ特徴があります。

たとえば、AMI符号は3値の形式を使います。2B1Q符号は、4値の形式で2値の形式と比べて伝送レートが高い特長があります。

参考記事
伝送データの符号化
伝送符号とは

信号と帯域幅

単純な信号の例を考えます。次の場合です。

  0101010101010101010・・・

一つの信号の時間幅は 1秒で固定します。つまり、一つの”1″は 1秒間続きます。同じように、信号”0″も 1秒間続きます。信号の周期は 2秒ごとに切り替わりますから、基本周波数は 0.5Hzヘルツです。(「基本周波数」については、最後の部分を参照。)

周波数 (Frequency)= 1 ÷ 周期 (Period)

上記のような同じパターンだけではなく、信号はたとえば次のように変化します。

  001001001001001001001・・・

これも同じ繰り返しパターンであるのは同じですが、信号の周期は今度は 3秒で、基本周波数は約 0.33Hzヘルツです。

また、ある場合は、次のように変化することもあります。

  10000000001010000111・・・

三つ目は、最長周期は 10秒で最短周期は 2秒です。基本周波数で置き換えると最低周波数は 0.1Hz(1/10秒)で、最高周波数は 0.5Hz(1/2秒)です。とても簡単な例ですから疑問の余地はないと思います。

ここで例に出した信号では、一つの信号パターンは 1秒かかりますから、どんな信号パターンの組み合わせの場合でも、最高周波数は 0.5Hz(1/2秒)でこれ以上早くすることはできません。この事は、一つの信号パターンの時間幅を固定する限り変えることができません。

以上のことから一つの重要な結論を導くことができます。

最も早い信号パターンの組み合わせの周期は 2秒で、基本周波数は0.5Hzです。 この間に”0″または”1″を伝送しますから、伝送レートは1ビット毎秒=1 bps (bit per second) であることがわかります。また、最も遅い周期は無限大(すべて “0”または”1″の連続パターンの場合。)で周波数は 0Hzです。これより、このシステムの帯域幅は 0.5Hzです

  帯域幅=最高基本周波数 ー 最低基本周波数
  bandwidth=maximum basic frequency ー minimum basic frequency

伝送レートを上げるには、基本周波数の最高値を上げれば良いことはすぐにわかります。

1 bps は、あくまで例に過ぎませんが、現在は、LAN環境でも 1G bpsは当たり前です。帯域幅と伝送レートの関係については、ここで示した例とまったく同じように説明できます。

周波数の限界と符号化

ただし、最高基本周波数はどこまでも高くすることができるという訳ではありません。

理由は、
・電気信号を伝えるワイアは周波数が高いほど減衰率が大きく、信号は歪む。
・周波数が高いほど、受信側は追いつかなくなり処理能力は低下する。
・論理1が連続する信号は、直流成分の増加により正しく受信できない。

そこで必要なことは、信号を符号化することです。符号化した信号により最高基本周波数を元の信号より低くできますから、これだけでも受信側は楽になります。符号はまた、信号の直流成分を減らし受信しやすくなります。

参考記事
伝送データの符号化
基本周波数
「基本周波数」と書いたのは理由があります。基本周波数は、信号に含まれる周波数の最も低い成分のことです。1番目の信号を理想的で単純な波形であると仮定すると、矩形波で表すことができます。この波形の成分を調べるには、信号をフーリエ変換による解析を行うと基本周波数以外の別の周波数成分を含むことがわかります。

詳細については、次の記事中の「周波数、波長、配線」を参考にどうぞ。

伝送路の仕組み[3]ー 伝送路の特性

同軸ケーブルとノイズ

<更新情報>
2014年2月8日
記事の最後に近い部分で、「20dB/decade=6dB/octave」が成立する理由を追加しました。

2014年1月27日
図3.3に誤りがあり、入れ替えました。「相互コンダクタンス Mutual inductance」の表記は誤りで、正しくは「相互インダクタンス Mutual inductance」です。訂正します。
なお、この図とは無関係ですが、「相互コンダクタンス transconductance」は真空管やFET (Field Effect Transistor) などの素子において、電流を制御するパラメータで増幅率に関係します。

2014年1月12日
図4.3で、相互インダクタンスの記号に誤りがあり入れ替えました。

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1. ノイズとシールド

電子回路やこれを使用する装置においては、ノイズの影響を可能な限り少なくすることはとても重要です。といっても、ノイズレベルをどこまで下げる必要があるのかは、システムの要求仕様によりさまざまです。 続きを読む 同軸ケーブルとノイズ

WiMAX 2, WiMAX, WiFi, 無線LAN, ADSL, Super-WiFi, イーサネットなど, 通信ネットワーク技術全般の詳細を解説します。モバイルWiMAX, WiFi等の比較も参考にどうぞ。

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