電気信号を伝えるケーブルやコードには、損失があり信号の強度は減衰する。損失には、導体損失、漏れ損失、誘電体損失などがある。
- 導体損失 Conductor losses
- 導体中にある直流抵抗 (DC resistance) は、すべての周波数の信号に作用する。同じ材質の導体は太いほど抵抗値は低い。表皮効果 (skin effect) は、高い周波数では、電流はほとんど導体の表面のみを流れる。
- 漏れ損失 Leakage losses
- ケーブルやコードには絶縁体を使用するが、絶縁体の絶縁抵抗は有限の値であり漏れ電流が発生する。
- 誘電損失 Dielectric losses
- 誘電損失は、誘電体に交流電圧をかけると信号エネルギーの一部が熱に変わる現象のこと。
絶縁体の目的は、同軸ケーブルなどでは、絶縁だけでなく、所望の「特性インピーダンス Zo」を実現するためでもある。すなわち、誘電体として働き、誘電率 (dielectric constant) は材質により異なるが、この値によりZoの値は変化する。
- 備考1 電力ケーブルの送電ロス
- ケーブルの電力ロスは、極端な大電力を扱う送電線について考えると非常に興味深い。
送電線の電力ケーブルは太いほど抵抗は小さいので、送電ロスを小さくできるが、現実には限界がある。同じ電力を伝えるとき、2倍の電圧にして送電すると電流は半分で済み、電力ロスは1/4にできる(Po=I2×R)。4倍の電圧ではわずか1/16で済む。送電線で送る電力は極端に大きいので、可能な限り高電圧で送電することが行われる。たとえば、500KVで1KAを送電し3%の電力ロスを発生すると仮定すると、15MW (15,000KW)は無駄に失われる。代わりに、2倍の電圧1,000KVで500Aを送電すると、ロスは1/4の3,750KWで済む。
発電所から最終目的地まではかなりの距離があるが、5%近くは電力ロスが発生し無駄な電力を消費すると言われている。電力ロスは、送電線の抵抗で多量に発生する。また特に雨の日などは漏れ電流が多い。損失の総量は、電力量も金額でも大変な大きさであることが分かる。
超伝導技術を使うと、電力ロスはほぼ0にできる。超伝導は電気抵抗が0になる現象のこと。ごく一般的な超伝導状態にするには、導体を絶対0度に近い極低温に保つ必要がある。これを常温に近い温度で実現できると実用性は極めて高いので、研究が行われている。
- 備考2 ケーブルとコードの違い
- ケーブル (cable) は、保護被覆を施した電線のこと。つまり、絶縁した電線の外側にさらに外装のカバーをかけたもの。太い同軸ケーブルのように固くて曲げにくいものが多いが、なかには曲げやすい同軸ケーブルやUSBケーブルのような柔らかいものもある。固いケーブルは、配線を変更することをあまり考慮しない。ケーブルは、建物の内部、機器の内部や機器間の配線に固定的に使うことが多い。
これに対し、コード (cord) は、絶縁電線と構造は同じだが、取り扱いを考慮し導体と絶縁材は柔らかい素材を使ったもの。コードは機器間の配線にも使うが、配線を固定しない使い方が多く、柔らかいので配線を変更することは容易にできる。