WiMAXはベストエフォート型サービス

ベストエフォート型サービスのもともとの意味は、「最善の結果を得られる
ようにするもの」です。

通信の世界では、そのシステムの最大速度があります。なにも通信だけに
限りませんが。

ベストエフォート型サービスでは、常に最大速度を得られるとは限りません。
なぜなのか、また、なぜ、速度が変わるのでしょうか?

パケットによる通信方式

WiMAXなどのデジタル通信の方式では、パケットを伝送し、情報のやりとりを
行います。

「パケット」は携帯電話の世界では、誰でも知っている言葉ですよね。
ところが、通信で使われる「パケット」がどういうものか、詳しく知る人は、
多くないでしょう。

パケット(packet)は「小さな包み」や「箱」の意味です。デジタル通信の世界
では、パケットを使って情報のやり取りを行う方式が多くあり、WiMAXは
その中の一つです。

パケット通信方式は、AとBの二者で情報のやり取りを行うときに、データを
いくつかのまとまりに分割して伝送します。

パケットには、もとの情報だけでなく、どこへ送るのか、宛先の情報も
付加することがあります。さらにいうと「誤り訂正」という、伝送エラーの発生
に備えて特別な情報も付加します。

さらに、WiMAXのような暗号化機能を備える場合は暗号化処理を施します。
悪意のある第三者に中身を知られてしまうと大変なことになりかねません。

送信側はパケットに分割し、付加情報を付け伝送します。受信側でパケットを
解析し、もとの情報を取り出します。これは、かなり面倒な操作です。

すべてのデジタル通信がパケットを使う訳ではありません。非常に面倒で手間が
かかることが多いからです。

当然ながら、パケットを使わない通信方法もあります。PCの内部で、一つの
ユニットと別のユニットの間で通信するときは、面倒なパケットは使いません。

ただし、少し例外はあり、パケットを使うものもあります。

なぜ、こんな面倒なことをしてパケットにするのか?

パケット通信方式のメリット

それは、一つの通信回線を複数のユーザーで共用して、同時に利用できるように
する目的です。

たとえば光回線でインターネット接続するのが、いい例です。
あるマンションでは、一つの光回線を全体で共用します。その回線は最寄りの
電話局につながっていますが、そこから局までの光ケーブルは1本だけです。

複数のユーザーが1本のファイバーケーブルによる通信回線を共用します。
WiMAXの場合は無線ですが、同じように通信回線を共用します。

共用する理由ですが、電波の周波数帯域が無限と言えるほど広ければ、一つの
周波数を一人のユーザーが占有できるでしょう。現実には、特に大都市のように
人口が多い地域ではできません。

通信回線の伝送速度が十分に速いならば、ユーザーごとにパケットを用意し、
振り分けると通信回線を共用することができます。

伝統的な電話による通信

少し話がそれますが、パケットとは別の方法で通信チャンネルを共用する
方法も存在します。

伝統的な有線電話がそうです。何を共用するのかというと、一組の電話線を送信
信号と受信信号の両方が使います。

電話は、自分の声を相手に伝え、また、相手の声を同時に聞くことができます。
技術用語ではこの状態(通信方式)を「全二重」といいます。

一般的な無線のトランシーバーは、同時に話をすることはできません。片側が
送信のとき、受ける相手は必ず受信のみです。こちらは「半二重」といいます。

有線電話の何が凄いかというと、電話線は2本しかなく、普通のやり方では、
一つの通信チャンネルしか確保できず、二つの通信チャンネルは最低でも3本
必要です。(ただ、3本では漏話が発生し実用にならないかもしれません。)

電話線は遠くまで伸ばす必要があり、1本でも少ないほうが何かと楽なのは容易
に想像できます。

しかし、伝統的な方法では2回線の共用が限界かと思います。

多重化通信

1本の通信回線を共用する技術は「多重, multiplexing」と言います。
多重化には、下記の方式があります(他にもありますが、省略)

  TDM ー Time Division Multiplexing, 時分割多重
  FDM ー Ferquency Division Multiplexing, 周波数多重
  WDM ー Wavelength Division Multiplexing, 波長多重

現在の通信技術は、伝統的な方式に比べると格段に進歩し、多重化でも高度な
ものを実現しています。

WiMAXでは「時分割」で「行き」と「帰り」の伝送を同時に行う「全二重」
通信を実現しています。また、周波数帯域を分けて行う別の方式もあります。

通信回線の容量

一つの通信回線が伝送できるデータ量には、限界があります。

たとえば、水道管をイメージすると、太い水道管は多くの水量を供給でき、
同じ太さでも水の流れる速度を早くすると、水量は増えます。

現実にはどこかで限界に達し、どこまでも増える訳ではありません。

データ通信では、一般に帯域幅(bandwidth)が伝送量の能力を表す言葉です。

「帯域幅」は、本来は、周波数の範囲(幅)のことですが、デジタルデータ通信
では、伝送量の能力を表す言葉として使われることが多いようです。

伝送路の容量は、「ビットレート」で表現します。ビットレートは、伝送速度
(周波数)とデータ量をかけ算した数値で、1秒間に何個のパケットを伝送
できるかが決まります。

水道管の太さがパケットの数に相当し、水の流れる速度が伝送速度(周波数)
に相当する、というイメージですね。

ベストエフォート型サービスと帯域幅

ベストエフォート型サービスの意味するところは、現実に当てはめて考えると
「最善の結果」とは、「そのシステムのある状況下における最大速度」です。

ベストエフォート型サービスでは、一つの通信回線を共用し、同時に行われる
データ伝送の量が少ないとユーザーあたりの伝送量を増やすことができ、日常の
言い方で速度は早くなる(帯域幅が広い)ということです。

また、ベストエフォート型サービスは、ユーザーごとの最大速度(帯域幅)を
保証しないので、状況次第では遅いことがあります。

回線のデータ量が多いと、ユーザーごとの帯域幅は狭く、速度は遅いと感じ、
実際に速度を測っても遅い訳です。