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＜更新情報＞
最終更新日　2012年11月22日　01:45
　　Super WiFiの通信距離について、従来のWiFiと比較した図がありましたが、802.22規格を使用したものと思われます。次の記事に移しました。
　　「IEEE 802.22とは」
　　http://wimax-page.123-info.net/archives/1943

最終更新日　2012年10月9日　21:17
　　伝送レートの表について参照元を表記しました。

最終更新日　2012年10月7日　00:45
　　伝送レートの表に誤りがあり修正しました。
　　WiFiとSuper WiFiの通信距離の違いについて、図を添付しました。
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従来のWiFi（無線LAN）は通信距離が比較的短い問題があります。この問題を解消すべく、新しい規格があります。

WiFiと無線LAN

WiFiは、業界団体である WiFi alliance が、IEEE802.11シリーズを利用する市場の製品を認定したものに与えるブランドです。

本記事では、WiFiと802.11シリーズ無線LANを同じ意味で扱うことがあります。厳密には異なるものですが、実用上はほぼ同じと考えて差し支えありません。ただし、無線LANには802.11シリーズ以外の通信規格も存在します。

参考記事

WiFiについての詳細は、記事「WiFiとは」を参考にどうぞ。

Super WiFi

　その規格は、スーパーWiFiの名前で呼びますが、「802.11af」規格はこのなかの一つです。スーパーWiFiは、もう一つ、802.22規格が存在しますが、別の記事を準備中です。スーパーWiFiではありませんが、日本では920 MHz帯を利用する 802.11ah規格も存在します。

　スーパーWi-Fiは、802.11シリーズ無線LAN規格のWi-Fiとは別の周波数帯域を使用します。テレビ放送用の帯域を使いますが、理論値では最大100マイル（160Km）先まで届きます。しかし、実際の利用時には、到達範囲は最大数マイルの距離にとどまる見込みです。

　米国では一部の地域でサービスを開始しました。（テキサス州ライス大学、ノースカロライナ州ウィルミントン）2013年初頭には、GoogleとMicrosoftが支援するAIR.Uプロジェクトにより、米国地方部の大学キャンパスにスーパーWi-Fiの導入を始める計画があります。

　英国でも実験サービスを開始しました。米国はFCCの規定による制限を受けますが、英国では、OOCの制限はFCCより緩やかで米国よりも市場に広がりやすいと言われています。日本では、TVWSの議論は2013年から始まるようです。

FCC　　Federal Communications Commission　連邦通信委員会　
　　　　米国内の放送通信事業を規制監督する機関
　　　　　　
OOC　　Ofcom Office of Communications　情報通信丁　
　　　　英国内の電気通信・放送等を規律監督する機関

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楽天スーパーWiFi

楽天とイーモバイルが共同で設立した新会社が提供する、似た名前の通信サービスがあります。商品名は「楽天スーパーWiFi」です。ここで話題にしている、「Super WiFi」は、これとまったく関係がなく、完全に別物です。楽天スーパーWiFiは従来のWiFi技術で、区別します。

端末の仕様は、イー・アクセスのPocket WiFi LTE GL04Pに準ずる
・WAN接続は、LTE回線、DC-HSDPA、W-CDMAのいずれかを使用
・LAN接続は、IEEE 802.11b/g/nに対応

（WAN等の用語については、用語集を参照）

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IEEE802.11af規格

　IEEE802.11af規格の概要です。

主な特徴は
・伝送距離は 100〜500メートル
・テレビ放送の空きチャンネルを活用
・周波数は 100〜数百 MHz
・公称伝送レート（速度）は 20〜30 Mbps（帯域幅=6 MHz または 7 MHz）

　スーパーWiFiは、従来のWiFiに比べると、伝送距離は伸びます。単純に距離が伸びるのではなく、建物などの影で見えない部分にも届くという意味です。理由は、使用する電波の波長にありますが、周波数は従来のWiFiより低く（長い波長）電波の直進する性質が薄れるからです。

　スーパーWiFiは、テレビ放送の空きチャンネルを探して使う仕組みです。英語では TVWS という用語が使われています。空きチャンネルがないと使えないので、都市部では難しいかも？という意見もあります。伝送方式は、従来の802.11シリーズ無線LANと同じ OFDM を使います。

TVWS　　TV (TeleVision) White Space frequency spectrum

OFDM　　Orthogonal Frequency Division Multiplexing
　　　　　直交周波数分割多重方式

　気になる、伝送レート（速度）は最大で30 Mbps程度であり、少し遅いですが、帯域幅が狭いので仕方ないところです。それでも、帯域幅の狭さをシンボルレート（変調速度）で補い伝送レートを稼ぎます。

　伝送レートは帯域幅だけでなくシンボルレートに密接に関係します。256QAM を使うときに 8MHz帯域幅 の条件で約35 Mbpsです。この値は物理層の公称レート（＝システムの最大レート）で、ユーザーが利用できる実効レートは、これからオーバーヘッドを差し引いた値です。

　利用者の多い混雑する都市部でWiFiを使う方ならお分かりと思いますが、実際の現場では、理論上の実効レートよりも大きく落ちることがあります。WiFiはベストエフォート型サービスですから、利用者が多いとユーザーあたりの実効レートは落ちます。

802.11afの変調方式と伝送レート (Mbps)
（＊1）

		BW＝6, 7MHz	BW＝6, 7MHz	BW＝8MHz	BW＝8MHz
		GI＝6μs	GI＝3μs	GI＝4.5μs	GI＝2.25μs
	BPSK (1/2)	1.8	2	2.4	2.7
	QPSK (1/2)	3.6	4	4.8	5.3
	QPSK (3/4)	5.4	6	7.2	8
	16QAM (1/2)	7.2	8	9.6	10.7
	16QAM (3/4)	10.8	12	14.4	16
	64QAM (2/3)	14.4	16	19.2	21.3
	64QAM (3/4)	16.2	18	21.6	24
	64QAM (5/6)	18	20	24	26.7
	256QAM (3/4)	21.6	24	28.8	32
	256QAM (5/6)	24	26.7	32	35.6

	略語	用語
	BW	Band Width　帯域幅
	μs	micro seconds　マイクロ秒
	GI	Guard Interval　時間軸上でデータどおしの干渉を防ぐ分離時間
	BPSK	Binary Phase Shift Keying
	QPSK	Quadrature Phase Shift Keying
	QAM	Quadrature Amplitude Modulation

空きチャンネルを調べる機能

　「TV放送の空きチャンネルを使う」仕様であることから、空きチャンネルがあるのかどうかを検出する仕組みが必要です。調べ方には次の方式があります。下記のDBにアクセスするプロトコル（通信手順）は IETFにより規格化したものを使います。

・モード1　　端末が他の携帯機器の機能を利用して調べる
・モード2　　端末がデータベース(DB)に直接つなぎ情報を取得する
・その他　　　端末に空きチャンネルの電波を検出する機能を使う

IETF　　Internet Engineering Task Force
　　　　インターネット技術の標準化を推進する任意団体

　802.11af は、TV放送の空きャンネルを利用する仕組みです。これは、TV放送の電波に隣接することを意味しますが、TV放送波に影響を与えます。スーパーWiFiは空いている場所を間借りする訳ですから、TV放送波への影響については厳しい制限を受けます。（もちろん、その逆の影響も考えられます。）許容する漏れ信号の振幅強度は、米FCCの規定では -55dBであり、他の通信サービスと比べてもとても厳しい制限です。

　　-55dB　　マイナス55デシベルは、電圧比で1/560、電力比で1/316,000

日本での実用化は、まだしばらくかかりそうです。

参考資料
＊1　日社エレクトロニクス 2012年9月17日号　日経BP社発行