符号に関する概要は、「伝送符号とは」をご覧ください。
❑ C1. Multilevel code 多値符号 3値の形式
多値符号は3値以上の電圧とパルスの組み合わせで表現するものをここに分類しました。ここで解説するのは3値の形式です。
C1-1. MLT-3
MLT-3は、100BASE-TX やCDDIに使われる符号化方式です。
- MLT-3 (Multiline Transmission, three levels) code MLT-3符号
- ・3値の電圧レベルを使う
符号化の規則
・次のデータは”0″のとき、次は変化しない
・次のデータは”1″のとき、
a. 現在の電圧レベル≠0Vなら、次は0V
・b. 現在の電圧レベル=0Vなら、次は最後の0Vでない電圧レベルを反転
名称について、なぜ “Multiline”なのかは、符号化の規則を意味するようです。複数のワイアは使用しないので、その理由ではないかと思います。
この方式は、あまり特徴がないように見えるでしょうか。なぜ、これを使うのかと思いませんか?
MLT-3は、元の位置のレベルに戻るまでに最悪値で3つの信号サイクルを消費します。(次の「最悪の条件」の図で、たとえば最初の”+V”の位置から始めて3つ目の”+V”まで)これを言い換えると入力データに対して1/3の変化率(=周波数)です。つまり、それだけ狭い帯域幅で伝送できる大きな特徴があります。
MLT-3 | MLT-3 最悪の条件 |
- 100BASE-TX
- 100MbpsのLAN規格
- CDDI Copper Distributed Data Interface
- FDDI規格の金属ワイアを使う形式。
- FDDI Fiber Distributed Data Interface
- トークン・パッシング方式のアクセス制御を備え、光ファイバーを利用する100MbpsのLAN規格。最近ではほとんど使われない。
C1-2. 8B6T
8B6Tは、前記の100BASE-TXに使われる符号化方式です。
この方式の考え方は、8ビットデータを3種類の電圧レベルを使い6つの信号の組み合わせにより表現します。伝送容量(速度)の平均値は、NRZ-Lなどに比べると、8ビットデータを6つの信号で伝送するので8/6倍です。(1つの符号あたり1.33個のデータ。)
データは28=256通りを表現でき、符号は36=729通りを表現することができます。729 − 256=473 通りは余りますが、同期とエラー検出の目的に使われます。
- 8B6T
- ・m =8 データは、00000000 から 11111111のどれか一つ
・B binary
・n =6 データを表現する符号の長さ
・L =T 信号レベルは3値(T=ternary、「3つの要素」)
「多値符号」はこのように「mBnL」の形式で名前が付いているものがあります。一般化するとそれぞれ文字の意味は次のとおりです。
- Multilevel code 多値符号
- ・m データのバイナリー (binary)パターンの長さ
・B バイナリー (binary)
・n 符号の長さ
・L 信号レベル(電圧振幅)の数
次の図は、3つの8ビットデータを3つの符号に符号化した例です。データと信号の組み合わせが、なぜ図のようになるのかについて、答えは「決まった規則はありません。この符号を使う前にあらかじめ組み合わせを決めます。(マッピング)」28=256通りのデータパターンを36=729通りのうちの256通りにマッピングしておきます。
8B6T | |