伝送符号とは

<更新情報>
2013年9月27日
 矩形波について、簡単な説明を追記しました。
2013年1月16日
 伝送符号のスクランブル処理について追記しました。
2013年1月3日
 次のリンクを追加しました。C2. 多値符号 2B1Q、多値符号 C3. 4D-PAM5
2013年1月2日
 次のリンクを追加しました。C1. 多値符号 MLT-3、8B6T
2012年12月31日
 次のリンクを追加しました。
 B1. ポーラーRZ符号、B2. バイポーラ符号、B3. ダイコード
 B2は構成を変更し、項目を追加しました。(関連する図と表も変更)
2012年12月29日
 A4. CMIとミラー符号へのリンクを追加しました。
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いくつかの符号化方式について、概要は伝送データの符号化に書きました。ここでは、伝送符号についてより詳しく解説します。

参考記事
符号の目的について詳細は、伝送データの符号化をどうぞ。

さまざまな符号

情報通信において「符号」の呼び名はさまざまな場面で使われますが、次のようにいくつもの意味があります。(分け方は厳密ではなく、種類は他にもあります。)

・画像や文字列などの情報圧縮に使う符号
・文字を表す文字コード
・暗号に使う符号
・信号伝送に使う符号

この記事では、4番目をテーマにします。

この記事で解説する内容

ここでは、有線通信ネットワークにおいて使う伝送符号に関連する基本的なことと、符号の種類について解説します。

・ベースバンド伝送、クロック、エンコーダ、デコーダの機能
・信号伝送に使う符号の種類(ライン符号とブロック符号)
・データと信号を表す用語について
・基準クロックとデータ
・伝送波形について
・ライン符号の種類

ベースバンド伝送と有線通信

有線通信においては「ベースバンド伝送」により通信します。通信の世界では、至近距離を除き元のデータをそのまま送ることはしません。そのまま伝送すると伝送エラーが発生し、まともに通信できない事態に陥るからです。伝送エラーを減らすのが目的でディジタルデータを符号に変換したものを伝送します。このときに必要なのは符号化方式です。

念のため、ベースバンド伝送は必ず符号に変換してから伝送するということではありません。至近距離では符号化しません。

ベースバンド伝送 Baseband Transmission
「変調」処理を伴わない情報の伝送方式。伝送信号の波形は2値または3値以上の電圧レベルで構成する。オシロスコープで表示すると、電圧レベルが2値のものは矩形(方形)の波形に見える。

ここでは、「変調」の定義は搬送波 (carrier) を伝送するデータや音声などの信号で変形すること。一部の符号化方式には、「変調」の用語を含む紛らわしい名称のものがあるため。

ベースバンド伝送は搬送波伝送と対比する。(下記)

たとえばUSB (USB2.0、USB3.0) では「符号化」してから伝送します。符号化方式は、USB2.0はNRZI、USB3.0は8B/10BとPRBSです。USBは最大伝送距離の規定はありませんが、一般に数メートル以内です。(USB規格で規定する信号パラメータから最大距離を計算することはできる。)この程度の距離でさえ伝送エラーは発生します。ましてLANのようなネットワークではなおさらです。

無線通信で使う「搬送波伝送」は「ベースバンド伝送」と対比します。

搬送波伝送 Carrier Transmission
伝送する情報を変調し、搬送波で送る方式。無線伝送はごくわずかの例外を除きすべてこの方式。

「搬送波伝送」では、ディジタル変調によりアナログ信号に変換し、伝送します。ディジタル変調した波形は、ディジタルではないことに注意してください。さらに、誤解を恐れずに言うならば、すべての信号はたとえ矩形波でもディジタルではなく厳密にはアナログです。下記の「伝送波形について」と続く部分のところで少し解説します。

参考記事
ディジタル変調については、ディジタル変調とはをどうぞ。

エンコーダとデコーダ

送信データはエンコーダ (encoder) により符号化します。受信した符号はデコーダ (decoder)により復合化します。

図 エンコーダ、デコーダの機能
Encoder & decoder Circuit
Encoder & decoder Circuit
 
送信側は、エンコーダ回路にデータを入力し符号を生成する。
 
受信側はデコーダ回路で復号化しデータを取り出す。
 

基準クロックとデータ

「基準クロック reference clock」は時間基準のことです。多くのディジタル回路では、クロック信号に同期して各種の処理を行います。「clock」は時計の意味ですが、電子回路では時間基準を意味します。多くの回路では水晶発振器により基準信号を発生します。

それぞれの符号化方式で、受信側は符号のクロックに同期しないとデータを抽出することはできません。

図 基準クロック
Clock and data
Clock and data
 
送信側で、基準クロックに同期してデータ”1″や”0″をエンコーダ回路に入力し、符号を生成する。 
 
伝送信号のクロック
ここではあまり深入りしませんが、送信機と受信機はそれぞれ独自の内蔵クロック信号を備えます。受信機は内蔵クロックではなく、伝送信号のクロックに同期して符号からデータを拾わなくてはなりません。なぜかというと、データは送信機のクロックに同期するからです。そのリズムを取らないと正しく拾えません。

送信機と受信機はそれぞれ独自に動作し、それぞれの内蔵クロックは同期しません。これは極めて当たり前のことです。独立して動作する装置の二つのクロックが何もせずに同期することは不自然で、あり得ません。受信機には、伝送信号のクロックに同期する仕組みを備える事が必須です。

伝送クロックの埋め込み
伝送符号のクロックに受信側が同期できるのかどうかは、大きな問題です。送信側のクロックをデータと別に送信すると、データ線とは別のワイアが必要になり大きな負担です。そこで、伝送符号には送信クロックを埋め込むことを行いますが、ある符号の種類ではこの機能が十分ではありません。この問題は「スクランブル」処理により解消できます。
伝送符号のスクランブル処理
AMI符号などは長距離の伝送に使われますが、そのままでは符号の性質から受信側は完全に同期することができません。「スクランブル」処理は必須です。詳細は、伝送符号のスクランブルとはをどうぞ。
伝送クロックの細かさ
伝送クロック周波数10MHzのシステムは早いとは言えませんが、1周期は100ns (1/10,000,000秒)の刻みです。同期するのにどれほどの細かさが必要かというと、さらに短い時間で合わなくてはなりません。F1自動車レースでは1/10,000秒刻みくらいで計るようですが、日常ではたぶん最も細かい時間を扱うと思います。100nsは一万分の1秒のさらに1/1,000のスケールです。まったく比較にならないほど違うことが分かると思います。

伝送波形について

特に初心者の方に注意しておきたいことは、ここで示す図はあくまで机上の模式図に過ぎません。現実の装置の波形は、単純に定規やツールで描いたような(理想に近い)形ではありません。送信側でさえ崩れます。まして受信側では、特に長距離の伝送とノイズによる影響で大きく崩れることもあります。(ここで示す図に限りません。すべての信号波形に共通します。)

もう一つのポイントは、ノイズの発生をできるだけ減らすため、送信側は高調波成分 (harmonic spectrum) を減らす目的でわざと波形を鈍らせることがあります。(他の信号や回路からみると一つの信号はノイズ源です。)なまらせる以前に、時間軸において立ち上がり90°の波形は無限大の周波数成分を含むので存在しませんが、送信側は一定の鈍い波形に整形してから伝送します。そうしないとノイズをまき散らすからです。  

たとえば、USB 2.0などは立ち上がり時間の値(短いほど急角度で、高調波成分をたくさん含む)を厳格に規定します。規定より速いものはUSB-IFの認証を受けることができません。

USB-IF USB Implementers Forum
USB (Universal Serial Bus) の普及を促進・サポートする非営利団体。いくつかの企業が参加する。http://www.usb.org/home
矩形波
「矩形波(方形波)square wave」は高調波成分のかたまりです。「クロック周波数」というときには、その意味は周期の逆数(f0、繰り返し周波数)のことです。ところが、矩形波の「周波数」は一つだけではありません。まず、片極性のパルスではDC(直流)成分 0Hzを含みます。矩形波は無数の高調波成分を含み、その範囲はf0のはるか下の低周波から数十倍以上の帯域まで広がります。この様子は、オシロスコープで表示するタイムドメインの信号波形では周波数の情報を見ることはできませんが、スペクトルアナライザで観測できます。また、信号波形をフーリエ変換 (Fourier Transform) すると、高価な計測器がなくても同じように分析・表示できます。

矩形波は厳密には理想波形です。無限大の周波数成分を含み、実現できません。現実の現場で使われる「矩形波(方形波)」は、実際には台形波 (trapezoidal wave) を意味することがほとんどです。

参考記事
矩形波や台形波の解析について、簡単に説明しました。次の記事を参考にどうぞ。「伝送路の仕組み[3]ー 伝送路の特性

伝送信号はアナログ

「すべての信号はアナログ」と書いた理由について、10 Gbpsを超える伝送波形などは、とてもディジタルとは言えそうにない鈍った波形に見えます。(時間軸を拡大すると相対的に遅く鈍い波形に見える。)

「ディジタル」は、ある信号レベルと次のレベルの間にある中間の電圧を(理想は)使わないからディジタルですが、長距離を伝送する間に減衰や歪みから逃れることはできません。「中間レベルを使わない」のは送信側だけの幻想に過ぎません。伝送路の影響による波形の乱れやノイズの影響を受けます。受信側が読み取り処理を誤る伝送エラーはある確率で発生します。受信側が「使って欲しくない中間レベルを誤って使う」のは、どんな対策を講じようとも避けることができない物理現象です。伝送誤りは、そのデータを捨てるか、または修正するのかどちらかしかありません。

伝送エラーの確率が1ppm (parts per million、1/百万)のシステムでは1メガビットのデータを伝送する間に1つの伝送エラーが発生します。システムの伝送容量が 1Mbpsでは、発生する割合は1秒に1個ですが、その100倍の容量(速度)のシステムでは、同じ1秒間に100個も発生します。1ppmと聞くと見えないほど小さく感じるかもれませんが、伝送システムではとても大きな数値です。

信号伝送に使う符号の種類

「符号 code」にはいくつもの種類があります。大きく分けると、2種類です。

・ライン符号 Line code
・ブロック符号 Block code

「ライン符号」は、元のデータビットを順番に符号化します。これに対し「ブロック符号」は符号化してから、一つの「まとまり」ごとに冗長性を加えます。受信側で伝送誤りをなるべく減らすのが目的です。

ブロック符号については、別の記事で解説する予定です。

ライン符号の種類

「ライン符号」にはいくつか種類がありますが、次の画像の右にあるように大きく分けることができます。

図 ライン符号の種類
Line codes
Line codes
・2値符号 Binary code
・3値符号 Ternary code
・多値符号 Multilevel code

分類について
MLT-3と8B6Tは3値の方式ですが、符号化の規則が少し複雑なこともあり、「多値符号」に分類しました。

次は、それぞれの中分類です。

2値の形式

まず、2値の形式です。次の記事で解説します。

・A1. 記事名「伝送符号 [A1] Unipolar ユニポーラ
・A2. 記事名「伝送符号 [A2] Polar NRZ ポーラーNRZ
・A3. 記事名「伝送符号 [A3] Biphase バイフェーズ
・A4. 記事名「伝送符号 [A4] CMIとミラー

3値の形式

3値の形式は、次の記事で解説します。

・B1. 記事名「伝送符号 [B1] Polar RZ ポーラーRZ
・B2. 記事名「伝送符号 [B2] Bipolar バイポーラ
・B3. 記事名「伝送符号 [B3] Dicode ダイコード

多値の形式

多値符号は3値以上の電圧とパルスの組み合わせで表現するものを、次のように分類しました。それぞれの記事で解説します。

・C1. 3値 記事名「伝送符号 [C1] MLT-3、8B6T
・C2. 4値 記事名「伝送符号 [C2] 2B1Q
・C3. 5値 記事名「伝送符号 [C3] 4D-PAM5

伝送符号の表

次の表はグループごとの解説記事にリンクします。

グループ名 グループ 符号名
2値 Unipolar code
ユニポーラ符号
(単流方式)
A1 A1-1. Unipolar-NRZ
A1-2. Unipolar-RZ
Polar code
(Dipolar code)
ポーラー符号
(複流方式)
A2 A2-1. Polar NRZ-L
A2-2. Polar NRZ-M (NRZ-I)
A2-3. Polar NRZ-S
A3 A3-1. Biphase-L (Manchester NRZ)
A3-2. Biphase-M (Manchester-1)
A3-3. Biphase-S
A3-4. Differential Manchester
A4 A4-1. CMI
A4-2. Miller (Delay Modulation)
3値 Polar code
ポーラー符号
B1 B1-1. Polar-RZ
Bipolar code
バイポーラ符号
B2 B2-1. AMI-NRZ
B2-2. AMI-RZ
B2-3. Pseudoternary
Dicode
ダイコード
B3 B3-1. Dicode NRZ
B3-2. Dicode RZ
多値 Multilevel code
多値符号
C1(3値) C1-1. MLT-3
C1-2. 8B6T
C2(4値) C2-1. 2B1Q
C3(5値) C3-1. 4D-PAM5
データと符号を表す用語について
用語は、次のように使い分けます。
データの表現は、”1″、”0″。
符号の表現は、”+”、”−”、”0V”など。
 ”+1″や”+2″は、具体的な電圧”+1V”や”+2V”の意味ではなく、電圧振幅の違いを示す。

参考文献

符号の方式については、主に次の資料を参考にしました。

Data Communications And Networking Fourth Edition
Behrouz A. Forouzan 箸(DeAnza 工科大学) 2007年 McGraw-Hill 発行

Algorithms for Communications Systems 2003
Nevio Benvenuto(イタリアPadova大学) Giovanni Cherubini(IBMチューリッヒ研究所)共著
2002年 John Wiley & Sons Ltd 発行

Digital Communications Third Edition
Ian A. Glover(Strathclyde 大学) Peter M. Grant(エジンバラ大学)共著
2010年 Prentice Hall 発行

A First Course in Digital Communications
HAH. NGUYEN(Saskatchewan大学) ED SHWEDYK(Manitoba大学)共著
2009年 Cambridge University Press 発行

図中の電力スペクトル密度の計算式は、次の資料を参考にしてこれを基にグラフを描きました。

On Pulse Shaping Techniques for Baseband Binary Communication
EE 160: Principles of Communication Systems
San Jose State University

Spectral Shaping Techniques
EE 296W – RFID Systems
San Jose State University

「伝送符号とは」への10件のフィードバック

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