LTEとは

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<更新情報>
2013年5月22日
 外観を変更(文章等は、ほぼそのまま)
2012年11月5日
 誤字を修正  直行周波数分割多重 → 直交周波数分割多重
2012年8月18日
 新しい記事へのリンクを追加 記事名「MIMOとは」
2012年8月16日
 3GPPについて、誤記を訂正
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LTE端末はすでに市場に出回っていますが、「LTE」とは何なのか、疑問や興味を
持っている方は多いかと思います。

LTE Long Term Evolution 携帯端末の通信規格の一つ、3.9G世代(=第4世代の手前)の方式

LTEは、従来のCDMAなどとは、内部の仕組みが違います。

3.9Gと4G

LTEは、下りの伝送速度(容量)が100Mbps以上で、上りは50Mbps以上の性能を目標にしたものです。(詳細は以下で)

市場では、LTEのことを4G(第4世代)と呼ぶ言い方も出回っているようです。国際電気通信連合が4Gの呼び方を認可したそうです。3.9Gと4Gの呼び方があり、紛らわしいことです。

4GにはLTE-Advanced規格があり、LTEよりも高速(大容量)の規格で、まったく異なります。

LTE規格は、3GPPと呼ぶ団体が策定しました。3GPPの実体は、いくつかの標準化団体の集まりです。

3GPP Third Generation Partnership Project

具体的には、米国のATIS、ヨーロッパのETSI、日本のARIB、TTC、韓国のTTA、中国のCCSAにより結成されました。3GPPは、W-CDMAやGSM以降の規格に関わっています。

ATIS Alliance for Telecommunications Industry Solutions
ETSI European Telecommunications Standards Institute
ARIB Association of Radio Industries and Businesses(電波産業会)
TTC The Telecommunication Technology Committee(情報通信技術委員会)
TTA Telecommunications Technology Association
CCSA China Communications Standards Association

LTEの概要と特徴

すでに説明したように、LTEは高速化(大容量化)した規格です。WCDMAなどに比べると伝送速度(容量)は大きく違います。

移動時の性能は、毎時15Km以下のときに最適化してあります。つまり、最大の伝送速度(容量)は15Km/h以下のときに利用できます。具体的な数値は調べていませんが、120Km/h以下では十分な性能を保ち、500Km/h程度でも動作することが設計時の目標です。

高速化(大容量化)の仕組みの一つには、MIMO技術にあります。

MIMO Multiple-Input and Multiple-Output 空間の通信チャンネルの本数を増やすことにより性能を上げる技術

理屈は単純です。複数の通信チャンネルは一本のときよりも、速度(容量)を上げることができます。LTEの主な仕様は、2×2 MIMO、4×4MIMOなどがあります。

水道管を想像してもらうと分かります。一本のときよりも本数を増やすと水量は増えます。MIMOは無線通信だけでなく、有線でも利用できる技術です。
参考記事
MIMOについては、次の記事を参考にどうぞ。「MIMOとは

MIMOは、複数の通信チャンネルを使いますから、高速化(大容量化)できます。しかし、実現する仕組みはそれほど単純ではありません。利点ばかりではなく、強烈な副作用があります。

MIMOでは、「マルチパス」による伝送の問題がより深刻化します。

送信アンテナから出た電波が、異なる経路を通り受信アンテナに届く現象です。電波の干渉により問題が発生します。現象が分かりやすいのはテレビです。マルチパスによりゴーストが現れ、複数の画像が見えます。

データ通信では、エラーが発生し、正しく伝送できないことが起こります。MIMO技術を効果的に使うには、マルチパスによる問題を抑える別の技術が必要です。

難病に効くいい薬があるのに、とても副作用がひどく、別の薬で抑えるのと良く似ています

LTEでは、マルチパスに強いOFDMAという通信方式を使います。ただし、下り方向のみです。上りは、別の理由で異なる方式を使います。下記を参照ください。

LTEの技術仕様


  表 LTEの主な仕様

表は、あくまで規格上の最大速度(容量)です。現実の機器では、さまざなな理由で最初から速度(容量)を抑えることがあります。

また、仮に規格と同じ値のシステムでもユーザーが利用できる実効速度(容量)は、ここまで上がりません。

無線通信では、有線よりもオーバーヘッドが大きい傾向があります。詳細は、次の記事をどうぞ。

参考記事
無線LANの実効速度

信号の伝送方式

伝送速度(容量)を上げるにはいくつかの方法があります。

無線通信では、搬送波(キャリア、carrier)にデータを乗せて伝送しますが、一本だけでなく複数のキャリアを使うと多量のデータを運ぶことができます。

参考記事
キャリアにデータを乗せるには「変調」の操作を行います。その方式は、いくつかあります。変調については、「モデムとは」をどうぞ。

  

複数のキャリアによりデータを運ぶ基本的な方法は、 FDM です。

FDM Frequency DIvision Multiplexing 周波数分割多重

FDMのような単純に複数のキャリアを生成する方法の欠点は、キャリアごとのすき間があり、効率が悪い点です。

OFDMは、FDMの効率の悪さを解消するべく考えられた方式です。

OFDM Orthogonal Frequency Division Multiplexing 直交周波数分割多重


  図 FDMとOFDM

OFDMと信号処理

OFDMは、信号を伝送するのに非常に理想的と考えられます。しかしながら、受信信号を復号する際に、理想的なフィルタが必要で、以前は大きな問題がありました。かなり特性の良いものでないと使えませんが、現実には不可能です。

フィルタ filter 信号を周波数で分離する処理に使う


  図 フィルタの特性
  

右側の図はソフトウェア(とはいっても標準搭載のアプリ)で合成しました。フーリエ係数を使った簡単なシミュレーションですが、現実のフィルタの特性はもっと複雑で単純な式で表すことはできません。しかし、実際に作れる特性は、だいたいこんなものです。


  図 フィルタによる信号分離
  

BPF バンドパスフィルタ  Band Pass Filter
FDM信号ならまだしも、近接する周波数のOFDM信号では、かなり理想に近いフィルタでないと、きれいに信号を分離することはできません。

画期的なアイデアが考えだした人々がいて、ブレークスルーが起きました。こういう事を頭がいいと言うのでしょう。

かなり専門的な話をしなければなりませんが、フィルタの代わりにフーリエ変換を使う方法です。

フーリエ変換 Fourier Transform
フーリエ逆変換 Inverse Fourier Transform

フーリエ変換・逆変換は、タイムドメインの信号と周波数ドメインの信号を相互に変換する処理です。

タイムドメイン Time Domain 時間領域
周波数ドメイン Frequency Domain 周波数領域
備考
メールやwebのドメインとは関係ありません。言葉は、共通の意味がありますが、異なる概念です。

詳しいことは省略しますが、周波数ドメインの信号には次の特徴があります。

ある信号を周波数ドメインの信号に変換すると、さまざな波形演算をしやすいのです。通信システムでは、実に様々な信号処理を行うので好都合です。

・周波数ドメインに変換した信号は変換前の元の信号と等価です。(変換誤差がないと仮定)
・周波数ドメインの信号は、周波数軸という時間軸とは別の次元で表したものです。(見る視点を変えただけで、同じものです。)
・周波数ドメインの信号は特殊な形式で、一般的ではありません。ほとんどの信号はタイムドメインです。

一つの例ですが、矩形波をフーリエ変換・逆変換するときの様子を図に表します。

  図 信号のフーリエ変換・逆変換

波形演算を行うのに便利なのは、周波数ドメインの信号です。しかし、フーリエ変換・逆変換の処理は非常に大きな演算パワーを必要とします。

DSP
このような演算を高速で実行するDSP(Digital Signal Processing)チップも生まれました。また、標準の方法では大量の演算が必要なので、大幅に手間を削減して効率化した演算方法を使ってフーリエ変換・逆変換を行います。その考え出された方法は、FFT・IFFTです。
FFT Fast Fourier Transform
IFFT Inverse Fast Fourier Transform

FFTとIFFTという効率化した方法をもってしても、以前は実用にはほど遠い状態でした。半導体技術の急速な進歩があり、モバイル機器にも搭載できるほどの強力な演算チップが、非常に低い消費電力で使える時代になり、状況は変わりました。

FFTやIFFTによる演算をリアルタイムに実行でき、現実のアプリケーションで使えるようになったのはごく最近のことです。

OFDMは便利な方式ですが、いいことばかりではなく欠点もあります。詳細は省略します。

LTEの内部には、OFDMを改良したOFDMAという方式が使われています。(OFDMAは、OFDMの欠点も引き継いでいます。)

OFDMA Orthogonal Frequency Division Multiple Access 直交周波数分割多元接続

OFDMとOFDMA

OFDMとOFDMAとの違いをごく簡単に説明すると、無駄を省き電波の利用効率を高めている点です。ユーザーと通信事業者の双方にメリットがあります。


  図 OFDMとOFDMA

余談ですが、表計算ソフトウェアでは、データ構造に配列を利用するのはすぐに思いつく解決策です。ところが、単純にたてよこに並べた構造では巨大な配列を扱うときは問題があります。表計算では、常にすべてのマスにデータがあるとは限りませんが、データがなくてもメモリのデータ容量を消費します。こんな時に便利なのが希薄配列(Sparse Matrix)で、マスを埋める分の容量しか消費しません。

OFDMAは、ちょうどこれに似ていると思いました。

LTEのアップリンク通信方式

OFDMAは、下り方向においては最適と認められLTEに採用された方式です。しかし、上り方向の伝送には不向きないくつかの欠点があります。

信号のピーク値が大きく、送信機のピークパワーが大きいのです。大きな装置ではそれほどではなくても、小型の端末では問題です。

そこで、LTEの上り方向には SC-FDMAという方式を使います。

SC-FDMA Single Carrier Frequency Division Multiple Access
名前は、シングルキャリアですが、構造を見るとそうは見えません。詳細は省略しますが、いずれにしても、OFDMAとは異なる構造です。

製品例

実際の製品の例です。
通信量の制限が無いので使いやすいのではと思います。

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