無線LANの実効速度

───────────────────────────────────
<更新情報>
2012.05.12
  記事のカテゴリを変更しました。
───────────────────────────────────
<公称速度と実効速度>
・説明に混乱があり修正しました。

<図の誤り>
・二つの図で、オーバーヘッドの割合に誤りがありました。
・これに伴い、1番目の図で11bの実効速度も修正しました。
───────────────────────────────────

公称速度と実効速度

無線LANでは「実効速度」があります。
製品のカタログなどで表示するのは実効速度ではなく、公称速度です。

公称速度は、システムの全帯域幅(速度)のことであり、ユーザーが
その速度で通信できることを意味しません。

食品を買うと多くの場合は、包装にくるんであるものが多いです。正味の重さ
は、包装を差し引いて考えなくてはなりません。

「実効速度」は、食品などの「正味の重さ」と似ています。

ADSLでは、公称速度のことを「リンク速度」と呼んでいます。

オーバーヘッドと実効速度

無線LANには「オーバーヘッド」という、伝送する内容以外に付加した
データがあり、この割合はとても無視できません。

無線LANでも有線LANでも、通信データは「パケット」と呼ぶまとまりの
状態にして通信します。

パケットの中身は、伝送する元のデータである「ペイロード」以外に
いくつかの付加情報が付きます。

  ペイロード  Payload 
         通信では、ユーザーが送信するデータ本体のこと

ここでは、ペイロード以外の部分である付加情報をまとめて
「オーバーヘッド」と呼ぶことにします。オーバーヘッドの中身の詳細
については、ここでは触れません。

  オーバーヘッド  
  「ヘッダ情報」その他に分かれ、送信元と宛先のアドレスや、通信を確立
  するために使う信号

「オーバーヘッド」は細かく分かれ、それぞれ説明用の名前が付いています。
(実際の信号に名前が付いているのではなく、説明の便宜上という意味。)

オーバーヘッドを追加することにより、送信する全体のデータは、次のように
膨らみます。

  送信データ =「オーバーヘッド」+「ペイロード」

オーバーヘッドは、食品などの「包装」のようなもので、正味の重さを考える
ときに重要です。

オーバーヘッドの割合は無視できず、たとえばペイロードの長さが1500
オクテットのとき、IEEE802.11bでは、(次の図では)41% 31%です。

  オクテット(Octet)  8ビットのこと
  ビット        デジタル信号の最小単位
            1ビットの信号は、0または1を表す

  通信用語では「バイト(byte)」の代わりに「オクテット」を使います。
  バイトは必ずしも8ビットを意味しないことがあるのが、その理由です。

IEEE802.11b 無線LANの実効速度

IEEE802.11bの公称速度は、11Mbps(メガビーピーエス)ですが、下記の
図から分かるように、実効速度は公称速度の59% 69%=6.49 7.59Mbpsです。

  Mbps Mega bit per second
      メガビット毎秒、メガは10の6乗(6個の0)

もちろん、いつもこの速度が出るということではありません。速度は、
さまざま条件で常に変化します。ある良好な条件でここで計算した速度に
達します。

  図 IEEE802.11b パケットフォーマット

ここでは、ペイロードの長さを1500オクテットにします。IEEE802.3
イーサネットの最大長の条件と同じで、通信の衝突や伝送エラーのない理想的な
条件のときです。

次の図は、11bでペイロード最大長の2312オクテットの場合です。
(ペイロード長以外は、同じ)ペイロード長1500オクテットの場合より
オーバーヘッドの割合は減少します。

  図 IEEE802.11b パケットフォーマット最大ペイロード

IEEE802.3(イーサネット)の実効速度

  IEEE802.3  イーサネット (Ethernet )とは、厳密には異なる規格。
         ほぼ同じですが、詳細は省略します。

次の図は、11b無線LANと比較するために、IEEE802.3イーサネット
10BASEのパケットを図解してあります。

11b無線LANと比較して、オーバーヘッドはいかに小さいか分かります。
2.4%しかありません。公称速度は10MBps、実効速度は9.76Mbpsです。
ただし、理想的な条件の場合です。信号の衝突を検出したり、再送すると
余計な処理が発生します。

  図 IEEE802.3 パケットフォーマット

有線LANでも状況により再送しなければならないことも発生します。信号の
衝突を検出すると再送処理を行います。この再送処理は、ぺイロードの再送
ではなく、通信開始を知らせる信号の再送です。通信はそこで滞りますから、
遅くなるという意味で影響します。

もちろん、データの再送を行うこともあります。

IEEE802.11b 無線LANの再送処理

次の図は、11b無線LANで再送処理を行うときのものでオーバーヘッドは少し
増加します。

  図 IEEE802.11b パケットフォーマット・バックオフ

まとめ
以上の説明で分かると思いますが、無線LANの「実効速度」は、カタログ
などに記載してある「公称速度」より小さく、有線LANよりも不利です。
オーバーヘッドの大きさの違いがその原因ですが、無線は有線よりも確実に
通信することが困難である特性からきています。

ここまでの説明は、がらがらに空いている回線を利用する場合です。

無線LANの利用者が多いと、一人のユーザーが使える速度はさらに低下
します。(本来は違う意味ですが「帯域幅が狭くなる」という表現も
使います。)

無線LANの速度が低下する理由については、次の記事もどうぞ。

  WiFiはベストエフォート型サービス
  http://wimax-page.123-info.net/archives/121

その他の無線LAN規格について

規格書を調べきれていませんが、ネットの情報を参照すると、さらに高速の
「11a」などの規格でも状況は似たようなものらしく、またの機会に記事に
するつもりです。

速度に関して、WiFiだけでなく、WiMAXも似た事情がありますが、やはり
規格についてまだ調べていません。ネットでは、実測した速度のデータを公開
してありますが、実効速度に関しては似たようなものと考えています。

無線LANの詳細については、次の記事をどうぞ。

  無線LAN
  http://wimax-page.123-info.net/archives/228