波長は、波の長さのこと。ここでは、光と電波または電気信号の波長について解説する。なお、この三者は本質的に同じものである。空間を伝わる電波やケーブルなどの導体を伝わる交流の電気信号は正弦波の形で表現できる。山と次の山、または谷と次の谷が現れる時間の間隔を「周期」と呼ぶ。1波長は、1周期で進む距離に等しい。波長と周波数は逆の関係にあり、伝わる速さ (速度 velocity) と周波数 (frequency)が分かると波長を計算できる。
波長λ=(速度 v)/(周波数 f)。また、周波数 f=(速度 v)/(波長λ)
電波の速度は真空中では3×108メートル (300,000 Km)で、空気中では少し遅い。電気信号も同じと考えて良い。金属などの導体の中を進むときは、65%程度に落ち、波長も短縮する。(この割合を波長短縮率という)媒体の比誘電率 dielectric constant に関係し速度も変化するが、実際にたとえば同軸ケーブルの品種により速度は異なる。
- 備考1
- 電気工学の専門書では「同軸ケーブル等は比誘電率による影響で電気信号の伝わる速度は遅くなる」と書かれた文献があるが、上記の「空気中では少し遅い」とか「電気信号の伝播速度は比誘電率の影響を受け、波長も変化する」も同じで、一見もっともらしいが本当は正しくない。アインシュタインの相対性理論によると、光速度は電磁場の伝播速度で常に一定不変であり、この事と矛盾する。電流や電波の伝わる速度も光と本質的に同じ。文献等に正しいことを書かないのは相対性理論を持ち込まなくてはならず、説明することが非常に難しいからであり、または相対性理論が関係することを理解していないため。
同軸ケーブルにパルス波を入力し出口をオシロスコープで観測すると「遅くなる」(ように見える)現象は簡単に確かめられる。(説明の詳細は省くが、特性インピーダンスと等しい抵抗で終端することは必須。でないと反射波により何を見ているのか分からない。)真空中では1nsあたり約30cm進むが、普通の同軸ケーブルでは波長短縮率65%程度で約20cm進み(進むように見える)2メートルでは10nsかかる(ように見える)。したがって、波長短縮率で説明するのはもっともらしいが、相対性理論と矛盾することを合理的に説明できない。
無難な説明は「遅くなるように見える」ぐらしか書けないが、まともに説明しようとすると困難を極める。しかし、電気の世界では相対性理論を無視してもほとんど不都合は生じないので「波長短縮率」という言葉で説明する。
- 備考2
- 山と谷のずれを「位相角」で表し、この位相差は180度ある。山と山では360度。
- 例1
- 2.4GHz無線LAN (WiFi)の波長は、12.5cm程度、5GHzでは6cm程度である。(プリント基板やケーブルを伝わるときはさらに短い。)60GHzの電波では5mm程度。
- 例2
- 可視光線の紫は約400nm(ナノメートル)で、無線電波と比較すると非常に短い。
- 例3
- 家庭用電源 50Hzの波長は、真空中(電気は伝わらないので電波にすると)で6,000Km程度で、波長短縮率65%ではそれでも、3900Km。
- 例4
- 水中では非常に低い周波数でないと電波は進むことができない。潜水艦の無線通信は3〜300Hzの周波数を利用する。3Hzの波長は10万Km、300Hzでも1000Kmある。