アース earth

アース (earth)の語源は地球のことで、電気/電子回路でも使う。ここで本題から少し離れる。「地球」は英語ではいくつもの言い方がある。blue planet, earth, globe, planet earth, terrestrial ball, the mother planet, the world など他にもいくつか存在する。
本題に戻し、電気回路の用語であるアース(接地)は、次のようにいくつもの意味がある。
1.基準(基準電位、reference potential)
2.帰路(リターン、return circuit)
3.保護接地(protective earth/ground)

1番目の「基準」は、電気/電子回路が動作するとき、一つ目の回路ブロックから二つ目の回路ブロックやこれ以降の回路に信号を伝達することが多く、電位の基準に使用する。「電位」は、電位差つまり電圧があるとポテンシャルエネルギーの差が生じるので、基準電位を等しくするためにワイアで接続する。二つ以上の回路ブロックは、電位差があるとそのままでは単純に接続して信号等を伝えることができない。電位は物理的な高さの位置エネルギーに例えると分かりやすい。

2番目の「帰路」は、電気/電子回路では信号(電気エネルギー)を伝えるときに「帰路」がないと伝わらない。これに関しては笑える話がある。自動車は特殊で、普通の電気回路とは異なり、バッテリーから1本だけつなぐだけで電気(電流)を伝えることができると勘違いする人がいたと聞いたことがある。たしかに、ヘッドライトなどは見た目は1本だけでつながっているように見えないこともない。そのカラクリは、バッテリーの片側を車のボディに接地しているからで、1本だけで電流が流れるのではない。なお車は、プラス接地とマイナス接地の両方がある。

3番目の「保護接地」は、感電を防止するのが目的で、装置などの電源の片側を筐体につなぐ。代表的な一つの例は、一般家庭のすぐ近くにある柱上トランスの回路を接地してあるが、もしこれがなく絶縁破壊が起きると6000Vに感電する事故が発生する。

アース(接地、グランド)は、電気/電子回路の基本ともいうべき内容であり、アース(接地、グランド)に関する話題は非常に範囲が広い。ここで触れた信号や電気エネルギーを伝える以外に、ノイズにも関係する。本にまとめると1000ページを軽く超えるほどの量がある。一例をあげると、伊藤健一氏のアース回路シリーズ(日刊工業新聞社刊)はアース(接地)に関して10冊にまとめられ、全体で約2000ページに達する分量がある。