伝送データの符号化

通信ネットワークでは、伝送するデータを符号に置き換えて(符号化)伝送します。受信する側では、受け取ったデータを「復号化」し元のデータに戻します。

「符号」には、非常に重要な働きがあります。
その理由は、この後に詳しく説明します。

その前に、伝送方式をどうするのかという問題があります。
LANでは、「ベースバンド伝送」という伝送方式を使います。

  LAN  Local Area Network
      平たく言うと、家庭や事務所の通信ネットワーク

続きは、以下で。

ベースバンド伝送とブロードバンド伝送

「ベースバンド」の本来の意味は「変調する前の基本波形」ですが、最近
では変調を伴わない伝送方式の意味で使われます。

用語 説明
変調 modulation ある「信号A」に別の「信号B」を加えて変形すること。目的はAを使ってBを伝送する。特に、無線通信では、変調せずにBを伝えるのは(普通は)できない。

<例> FM放送は、Frequency Modulation 周波数変調の方式。76MHzの放送では「信号A」は76MHzの電波で「搬送波 (carrier)」という。「信号B」は音声など可聴帯域の信号。FM受信機は、受信した電波を「復調 demodulation」し、元の信号を取り出す。

無線通信では、普通は変調は欠かすことはできませんが、例外とも言える研究があるようです。(機会をみて、また記事にします。)

「ベースバンド伝送」(baseband transmission)以外の伝送方式には、「ブロードバンド伝送」(broadband transmission)があり、こちらは信号を変調し伝送する方式です。

「ブロードバンド伝送」は、個人的には少し違和感を覚えますが、そのように呼ぶようです。変調するので、確かに「広帯域になる」ような気はします。

しかし、変調すると、ディジタル信号のデータ量は確かに増えますから、「帯域幅の増加≒データ量の増加」は理解できます。

用語については、たとえばインターフェース関係の用語でも、大した意味ではないものが多いです。今は個人では使わなくなりましたが、SCSI (Small Computer System Interface)などは、深い意味はありません。

まあ、用語については良しとしようと思いますが、しかし「ブロードバンド回線」と「ブロードバンド伝送」は、かなり違うようでめんどうです。

符号化とは

冒頭で書いたように、送信側は「符号化」したデータを送出し、受信側は「復号」して元に戻します。

用語 説明
符号化 encoding
復号化 decoding
符号 code または symbol

「符号化」とは、簡単にいうと元のデータに修正を加え別の形式にすることです。もちろんでたらめではなく、一定のルールに基づく修正を行います。

ディジタルデータでは、すべての信号を0または1で表します。電気信号ではどうするかというと「電圧が低い」または「電圧が高い」信号で表現します。光なら、「光が弱い」または「光が強い」という具合です。

たとえば、数字の「4」を0と1で表現すると「0100」です。0と1しか使わないので2進法といいます。「0100」だけでは何か分からないので「0100b」のように表します。(違う表記法もあります。)

あなたがいつも使うのは10進法だと思いますが、ディジタル機器では、基本的には2進法しか使いません。実際には、人間が2進法で読むのは効率が悪いので、8進法や16進法で置き換えることができ、少し楽になります。

さて、通信ネットワークにおいて、たとえばデータ「”4” “0” “0” “0”」を伝送するときは、単純に (0100 0000 0000 0000)b の形式では行いません。

なぜかというと、正しく伝わらない事態が発生します。その理由は、深く触れませんが、次の話題の2番目と3番目に関係します。

符号化の目的

符号化の目的は、一言でいうと「通信しやすくし、また確実に通信する」ことです。具体的には、次の処理を行います。

・伝送クロック信号を重畳する
・直流成分をカットする
・信号の周波数帯域幅を減らす

➔ 伝送クロック信号

ディジタル機器では、クロック信号を必ずと言っていいほど使います。「クロック」は、直訳すると時計の意味ですが、「時間基準」のことです。ある時刻(タイミング)にデータが何であるかは極めて重要です。

データだけ送られてきても、どのタイミングでとるのかが分かりません。そこで、クロック信号を必要とします。

クロック信号を別の線で送ることはできますが、線の本数が増えて大変です。本数を増やさず、同じ線を二つの信号で共用するために信号を「重畳」(superimposing)します。

➔ 直流成分のカット

伝送媒体を介して信号を伝送する間に、波形はノイズや反射により形がくずれます。受信側では、あるしきい値で判定する処理を行いますが、ノイズ等の影響があるかどうかが分かり、適切な処理を行うことができます。

用語 説明
媒体 media 有線では信号ケーブル 無線では電波
ノイズ noise 空間には様々な電気機器が発生するノイズで溢れています。自然界のノイズもありますが、電気機器によるほうがはるかに多いでしょう。
反射 reflection 高速(立ち上がり時間の短い)の信号は、反射する現象を起こし、信号は劣化し大きく影響を受けます。信号波形の波長と立ち上がり時間の比率は、反射に関して重要な関係があります。(詳細は省略)

符号化せずに伝送すると、波形に直流成分が発生します。簡単に説明すると0と1のどちらかの数が多いとこの状態が現れます。

信号の「直流成分」については、考慮しなければならないさらに深い意味がありますが、ここでは触れません

符号化の方式によっては、0と1の数をうまく揃えることができます。(直流成分を抑え、前記の、しきい値による判定がしやすい)

➔ 信号の周波数帯域幅

広帯域(高速)にすればするほど、エラーなしに伝送することは困難です。符号化すると、まったく同じ内容の信号を、より狭い帯域幅で伝送することができます。

逆に、同じ帯域幅なら、より多いデータ量を通信することができます。

ただし、符号化方式によっては狭帯域化の効果はありませんが、低速の伝送では、このことは問題になりません。

これらは、ディジタルの話ではなく、基本的にアナログ領域の話題です。伝送速度が速ければ速いほど避けて通れない要の部分です。

符号化の種類

符号化の例を挙げます。(これ以外にもいくつかあります。)

形式/省略語 用語
RZ 符号 Return to Zero code
NRZ 符号 Non Return to Zero code
NRZI 符号 Non Return to Zero Inversion code
マンチェスター符号 Manchester code
4B/5B符号
8B/10B符号

<1.RZ 符号>
帯域効率は最大50%で、効率がいいとは言えません。たとえば、10Mbpsの回線では、5Mbpsのレートで伝送できます。

0が連続すると、クロック信号を抽出できない欠点があります。

実現する回路は簡単で、赤外線リモコンなどの低速の回線に良く使われる方式です。

  図 RZ 符号

<2.NRZ 符号>
一見すると、符号化しないように見える方式です。特長は、帯域幅を最大限に使える点です。

しかし、1または0の連続では、クロック信号を抽出できません。手間ですが、「スクランブル」処理を行うと改善できます。

1000BASE等で使われます。(1Gbpsのネットワーク仕様)

  図 NRZ 符号

<3.NRZI 符号>
帯域幅を最大限に使えます。クロック信号を抽出できない条件がある点は、
NRZと同じです。

100BASE等で使われます。(100Mbpsのネットワーク仕様)

  図 NRZI 符号

<4.マンチェスター符号>
帯域効率は最大50%です。クロック信号を抽出しやすい特長があります。

10BASEで使う方式です。10BASEは、今ではもう使われていないかもしれません。

  図 マンチェスター符号

<5.4B/5B符号>
4ビットの信号を5ビットに置き換える処理をする方式です。

伝送路の低周波成分を抑える特長がありますが、伝送帯域幅は25%余計に必要です。具体的には、100Mbpsの伝送では125Mbpsの帯域幅が要ります。

100BASEその他で使われます。

次の図で、「データ」を「シンボル」に置き換える処理を行いますが、100Mbpsの通信では、4ビットの置き換えの時間は10億分の40(40ナノ)秒という大変短い時間です。(単純計算です。他の処理を入れるとさらに短い。)

  図 4B/5B符号

<6.8B/10B符号>
「4B/5B符号」と似た方式で、8ビットの信号を10ビットに置き換える処理を行います。

伝送帯域幅は25%余計に必要ですが、ビット数が増え符号割当の余裕が増加します。この点を有効に使う工夫がなされています。

1000BASEでも使われます。(「4B/5B」の100BASEに比較すると、10分の1くらいの短い時間で処理します。)

LANではありませんが、最近では、USB3.0でも使われる方式です。

  USB3.0 Universal Serial Bus 3.0
       最大4.8GbpsのUSB規格

最後に

符号化について、「何それ?」という方も多いのではと思います。

符号化は通信においてなくてはならず、これがないと成立しません。裏方ですが、それほど重要な技術です。参考にしていただけると幸いです。