ベストエフォート型サービスに関する話題

<更新情報>
2013年1月2日
  電気信号の遅れについて、追記しました。
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通信の遅れ時間

通信の世界では、QOS (Quality Of Service)の概念があり、通信品質を定義
します。

その「品質」ですが、ここでは遅れ時間を話題にします。

本来のQOSは、他に、信号の紛失や時間ゆらぎなどがありますが、ここでは
省略します。

QOSは、高速通信が当たり前の現在では、場合によりますが重要です。

QOSをごく簡単に、郵便や宅配便にたとえるなら、配達完了まで最大で何時間
以内かを保証します。

デジタルTV放送

もう一つ似たような例があります。
デジタルTV放送では現在の技術では、放送局から送信した信号を受信し解読
(復号)するまでの時間遅れが非常に大きく、時報のようなリアルタイムに
(即座に)必要なものには使えません。

時報がないのに気づいた方もいるでしょう。以前のアナログ信号による放送
では行っていましたが、現行のデジタルTV放送では、役に立たないので
なくなりました。

数秒もの遅れがあるからですが、時間遅れが大きすぎるので、時報が遅れて
しまい使いものになりません。

送信側で圧縮して受信側は伸張する操作を行います。なぜかというとデータ
量が膨大で、できるだけ伝送量を減らすためです。圧縮なしで送ると余計に
時間がかかりますから。

送信側で行う圧縮と受信側で行う伸張の処理に、とても時間がかかり使え
ません。伝送時間も含めて現在の千分の1にできれば、時報なら使える
でしょう。しかし、それだけの処理能力が必要です。

電話網

遅れ時間に関して、もう一つ、電話があります。

話しかけてから返事が届くまでに、数秒も遅れがあると非常に会話しにくいです。

テレビで衛星中継の場面があり、相手の返事が少し遅れます。どうしたの?
と思うくらい遅れることがありますよね?

電波の速度は非常に速い(秒速で地球を7周半)です。電気信号も同じ程度
ですが、装置を通ると遅れが発生し増大します。

遅れの原因は、電気ケーブルやプリント基板などの導体、信号処理の半導体
チップです。信号はケーブルを通過するだけでも遅れ、回路素子を通りさらに
遅れます。たくさんの回路があり、合計時間は累積します。

誘電率の影響
電気信号がケーブルなどの導体を通過する速度は、光や電波の6割程度で、
絶縁材の材質(誘電率)により速度は変化し、同時に波長も変化します。
半導体素子の内部を通過すると、この比ではなく桁違いに遅れます。
相対性原理との矛盾
上記の誘電率による影響は、高周波回路の参考書などには、まことしやかにそのように書かれていますが、本当は正しくありません。

アインシュタイン(Albert Einstein) の相対性理論と明らかに大きく矛盾します。電気の伝わる速さ(伝播する速度)は光と同じで、「常に一定不変」ですが、絶縁材の材質(誘電率)により「遅くなるように見えます。」なぜそう見えるのかについて、説明するのは困難を極める内容です。なお、周波数は変化しません。経過時間はオシロスコープがあれば簡単に測れますが、実際に経過時間は変化するので、起きる現象は「遅れる」ように見えるとしか言いようがありません。物理の書籍によると「光速度は常に一定不変」の原理は、さまざまな実験でも事実であることが確認できています。

参考書などに「誘電率の影響で遅くなる。」と書いてあるのは、そうしておかないと説明が困難だからです。電気の世界では相対性理論を無視しても、普通は不都合はありません。光、電気、電波(電磁波)は共通点がありますが、このように不思議な性質があります。

なお、半導体素子の内部を通過するときの遅れは、誘電率による影響ではなく物理的な処理の遅延です。

  
携帯電話に限らず、デジタル回線を利用する電話網は、パケットによる伝送を
行い通信しますが、遅れ時間は大きな問題で、大きすぎると非常に使いにくい
システムになってしまいます。

パケット伝送網は、障害をきたさないように、遅れ時間を最小限にする工夫が
なされています。

光通信回線

インターネットプロバイダなどの業者さんのコンピュータシステムは、バック
ボーンという太い伝送量の多い回線に、(直接ではないが)つながっています。

回線の伝送量は、システムの処理性能に直結します。回線が細いと「××の業者
さんは回線速度が速くない」という評価になります。

「バックボーン」ネットワークでは、ATMという伝送手段が普通です。
銀行のATMのことではなくAsynchronous Transfer Mode
(非同期転送モード)という高速ネットワークを支える通信技術です。

  ただ、バックボーンネットワークにATMを使うのが普通という状況は
  変わりつつあるようで、高速イーサネットも使われ初めています。
  

ATMでは、「音声」「画像」「その他のデジタルデータ」をすべて「セル」
(=パケット)にして伝送し、複数の回線に対応するため多重化が行われます。
当然ながら音声や画像もデジタル化します。

「多重化」については、次の記事もどうぞ。

  WiMAXはベストエフォート型サービス
  http://wimax-page.123-info.net/archives/52

光ファイバー

ATMなどのデジタル回線の伝送媒体は光ケーブルで、その「光」はレーザー
です。なぜ、レーザーを使うのかというと、位相が揃っておりエネルギーが
減衰しにくい理由です。ほとんど単一の波長に近い性質があり特別な光です。

  レーザー LASER
       Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation
       輻射の誘導放出による光増幅

レーザーの伝送には、マルチモードとシングルモードの伝送方法があります。

マルチモードは簡単に説明でき、ファイバーの中を反射しながら光が伝播
(でんぱ)します。

シングルモードは難しすぎて簡単に説明できませんが、こちらのほうが広帯域
で到達距離も格段に伸びます。シングルモードの物理は非常に難しく、ちょっと
したレベルの専門書では、本質的な説明を省くほど難解です。

世の中には、簡単には説明できない自然界の現象がありますが、シングルモード
の物理現象もその中の一つです。ある通信ネットワ−クの解説本には、「光が
全反射しながら進む」という説明がまことしやかに書いてあり、これは完全な
誤りです。

マルチモードは、「光が全反射しながら進む」ので単純ですが、シングルモード
は簡単に説明できません。ある人は「ファイバーの中を・・・進む」と表現
しますが、これでは説明したことになりませんね。

  「・・・」の部分は、「すーっと」とか、「じわーっと」などです。

基本的なものに近づくほど難しいのは世の常で、たとえば電気がそうですね。

ついでに、電気とはあまり関係ないと思いますが、「水」もそうです。水の
物理に関しては解明できていないことがあり、物理の教科書には分かっている
ことしか書いていないのです。

ベストエフォート型サービスとQOS

ベストエフォート型サービスでは、QOSを考慮しません。遅れ時間等を保証
しないからです。

でも、回線が空いているときは速いです。

ATMで伝送する回線は、高度な信頼性を要求するため、当然ながらQOSに
対応するのは当たり前で、ベストエフォート型とは対局の世界です。

ベストエフォート型を一般道路に例えると、QOSを備える回線は混雑した都市
を走るバスの専用レーンや、高速道路のようなものです。