帯域幅と伝送レート

はじめに

帯域幅と伝送レート(伝送速度)にはどんな関係があるのか、興味があると思います。

帯域幅が狭いと伝送レートは低いのはなぜか?
逆に、帯域幅が広いと伝送レートは高いのはなぜか?

帯域幅と伝送レートは密接な関係があるのですが、ここでは、このことについて解説します。

ディジタル信号は、”0″と”1″のように表すことができます。”0″は信号がない状態を表し、”1″は信号がある状態です。電気信号でこれを表現すると、一つは低い値で、もう一つは高い値で置き換えます。

ディジタルとは
ディジタル(digital)は、単語ディジット(digit 数字、指など)の形容詞で、指で数えることができるという意味です。アナログ (analog, analogue) と対比します。
正論理と負論理
信号”0″を低い電圧で表し、信号”1″を高い電圧で表す方法は正論理(せいろんり positive logic)です。

これとは逆に、信号”0″を高い電圧で表し、信号”1″を低い電圧で表す負論理(ふろんり negative logic)も良く使います。

正論理は明快で分かりやすいですが、常にこれが最良であるとは限りません。信号を負論理で表す利点は、実際にロジック回路を設計する人ならすぐに分かることですが、論理ゲート (logic gate)の種類を減らす効果があることです。ここではこれ以上は触れません。

信号を多値で表す形式
ある程度以上の距離における信号の伝送では、3値以上の電圧で表現する方法もあります。信号を伝送するとき、一般に多値の形式は効率良くデータを伝送できます。多値の形式が一概に効率が高いとは言えませんが、それぞれ特徴があります。

たとえば、AMI符号は3値の形式を使います。2B1Q符号は、4値の形式で2値の形式と比べて伝送レートが高い特長があります。

参考記事
伝送データの符号化
伝送符号とは

信号と帯域幅

単純な信号の例を考えます。次の場合です。

  0101010101010101010・・・

一つの信号の時間幅は 1秒で固定します。つまり、一つの”1″は 1秒間続きます。同じように、信号”0″も 1秒間続きます。信号の周期は 2秒ごとに切り替わりますから、基本周波数は 0.5Hzヘルツです。(「基本周波数」については、最後の部分を参照。)

周波数 (Frequency)= 1 ÷ 周期 (Period)

上記のような同じパターンだけではなく、信号はたとえば次のように変化します。

  001001001001001001001・・・

これも同じ繰り返しパターンであるのは同じですが、信号の周期は今度は 3秒で、基本周波数は約 0.33Hzヘルツです。

また、ある場合は、次のように変化することもあります。

  10000000001010000111・・・

三つ目は、最長周期は 10秒で最短周期は 2秒です。基本周波数で置き換えると最低周波数は 0.1Hz(1/10秒)で、最高周波数は 0.5Hz(1/2秒)です。とても簡単な例ですから疑問の余地はないと思います。

ここで例に出した信号では、一つの信号パターンは 1秒かかりますから、どんな信号パターンの組み合わせの場合でも、最高周波数は 0.5Hz(1/2秒)でこれ以上早くすることはできません。この事は、一つの信号パターンの時間幅を固定する限り変えることができません。

以上のことから一つの重要な結論を導くことができます。

最も早い信号パターンの組み合わせの周期は 2秒で、基本周波数は0.5Hzです。 この間に”0″または”1″を伝送しますから、伝送レートは1ビット毎秒=1 bps (bit per second) であることがわかります。また、最も遅い周期は無限大(すべて “0”または”1″の連続パターンの場合。)で周波数は 0Hzです。これより、このシステムの帯域幅は 0.5Hzです

  帯域幅=最高基本周波数 ー 最低基本周波数
  bandwidth=maximum basic frequency ー minimum basic frequency

伝送レートを上げるには、基本周波数の最高値を上げれば良いことはすぐにわかります。

1 bps は、あくまで例に過ぎませんが、現在は、LAN環境でも 1G bpsは当たり前です。帯域幅と伝送レートの関係については、ここで示した例とまったく同じように説明できます。

周波数の限界と符号化

ただし、最高基本周波数はどこまでも高くすることができるという訳ではありません。

理由は、
・電気信号を伝えるワイアは周波数が高いほど減衰率が大きく、信号は歪む。
・周波数が高いほど、受信側は追いつかなくなり処理能力は低下する。
・論理1が連続する信号は、直流成分の増加により正しく受信できない。

そこで必要なことは、信号を符号化することです。符号化した信号により最高基本周波数を元の信号より低くできますから、これだけでも受信側は楽になります。符号はまた、信号の直流成分を減らし受信しやすくなります。

参考記事
伝送データの符号化
基本周波数
「基本周波数」と書いたのは理由があります。基本周波数は、信号に含まれる周波数の最も低い成分のことです。1番目の信号を理想的で単純な波形であると仮定すると、矩形波で表すことができます。この波形の成分を調べるには、信号をフーリエ変換による解析を行うと基本周波数以外の別の周波数成分を含むことがわかります。

詳細については、次の記事中の「周波数、波長、配線」を参考にどうぞ。

伝送路の仕組み[3]ー 伝送路の特性