伝送符号のスクランブルとは

符号に関する概要は、「伝送符号とは」をご覧ください。

伝送符号のスクランブル処理

まず、「スクランブル」処理について簡単に説明します。

スクランブル
スクランブルは、第三者が通信の内容を解読できないようにする処理でも使います。この処理についてはここでは触れませんが、この記事のテーマとの共通点もあります。スクランブルは簡単にいうとデータをランダム化する処理です。

有線通信において、送信側が送出するデータを受信する際には、受信側は送信データに重畳する伝送クロッックを抽出し、このタイミングに合わせることが必要です。この状態を受信装置が伝送クロックに同期していると言います。

重畳
この場合はデータにクロックを内蔵すること。

いくつかの伝送符号の形式では、その性質から受信装置は完全に同期することができません。たとえば、AMI符号では、データ”0″が連続すると受信側はタイミングを正しく取ることができません。そこでデータ”0″の連続を「スクランブル」処理することにより、別の信号パターンに変換します。受信側は、正常に受信できると「スクランブル」処理された信号パターンを元に戻します。

スクランブル処理は、このように受信側が同期することができるように符号を細工します。

AMI符号は、長距離の伝送に使われますが、そのままでは同期できない問題があり、スクランブル処理は欠かすことができません。

AMI符号
詳細は、「伝送符号 [B2] Bipolar バイポーラ」をご覧ください。
参考記事
伝送データの符号化」も参考にどうぞ。

ここでは、二つの「スクランブル」処理方式について説明しますが、どちらも4個以上の”0V”が連続することはなく、受信側は同期することができます。

B8ZS

一つ目の方式です。

B8ZS Bipolar with 8-Zero Substitution
・8つの連続するデータ”0″を「000VB0VB」の信号名で表す符号に置換する。
・次の図のように二つの場合があり、符号を反転する。
 一つ目は「000+−0−+」、二つ目は「000−+0+−」
・図にある信号名の「V」はViolation、「B」はBipolarを意味する。

信号名の「V」と「B」について、「V」の後には「B」が続き、それぞれ極性の区別はありません。データ”0″が3個続いた時点でこの処理を開始します。B8ZSは「violation」を表す信号を生成し、続いて反転する「bipolar」を生成します。その後の信号は図のとおりです。

B8ZS-1 B8ZS-2
B8ZS-1
B8ZS-1
B8ZS-2
B8ZS-2
最初のデータ”1″の信号が反転する場合

それぞれの図で、上側にデータ、下側に信号名を示します。

HDB3

二つ目のスクランブル処理です。

HDB3 High Density Bipolar 3-Zero
・4つの連続するデータ”0″を「000V」または「B00V」の信号名で表す符号に置換する。
 4つの連続するデータ”0″の開始点で、パルスの数が
 a. 奇数なら、「000V」に置き換える。
 b. 偶数なら、「B00V」に置き換える。
・信号名の「V」はViolation、「B」はBalancing pulseを意味する。

図の「1番目」から「3番目」までのそれぞれの範囲は、置換後の信号パターンを表します。(グレー色のパルスは置き換えの対象ではありません。)

HDB3
HDB3
HDB3
「Even 偶数」と「Odd 奇数」は、開始点から数えて0Vでないパルス(+または−)数の合計が偶数か奇数かを表す。

HDB3はAMI符号を基準に作られたものです。
(AMI符号については、上記の記事を参考にどうぞ。)